事業に失敗して多額の借金を抱えたAと、
病気で余命いくばくも無いその妻B子。
2人は、幼い子供たちを知人に預けて、
夕暮れ時に人気の無い山道を歩いていた。
「せっかくだからムービーを撮りながら歩こう。」
Aはときどきカメラを回した。
狭い道路わきが崖になっている所で2人は立ち止まり、昔の話を始めた。
出会った頃の話、両親に反対されて駆け落ちした話、
子供が生まれたときの話…。
そのとき、向こうから車がやって来た。
Aはカメラを回しながら、
「これで子供たちは大丈夫だ」
と心の中でつぶやいた。
車が2人の横を通り過ぎた瞬間…。
2人はこいに落ちた。
【解説】
『2人はこいに落ちた』
2人はすでに夫婦である。
そのため、”恋”に落ちることはなく、
”故意”に落ちた、が正しい。
『これで子供たちは大丈夫だ』
『車が2人の横を通り過ぎた瞬間…』
とあることから、やってきた車にわざとぶつかった振りをして、
山道から落ちた。
そして、生命保険と慰謝料を得て、
それで借金を返してもらい、
残りは子供のために使ってもらいたいと考えたのだろう。
ムービーも車にぶつかった証拠として残している。
しかし…正直多額の借金を抱えた夫婦が、
人気の無い山道を歩いて、
昔を懐かしんでいるムービーを撮っていたとか、
あまりに怪しすぎないだろうか…?
計画的、と思われてもおかしくないと思う。
というか、計画的であると見抜いてくれないと、
ドライバーがあまりに不憫である…