おれは超能力者だ。
常人には出来ない能力を二つ持っている。
一つは生物の水分を飛ばして干物みたいにする能力。
もう一つは過去の世界に戻る能力。
超能力スゲーと思うか?
だが、全然役に立たん。
はじめの能力は生き物を殺すことしか出来ない。
嫌いなやつだってなかなか殺すわけにはいかないからな。
使いどころがない。
後の方の能力も過去に行って何かをしても、歴史は変わらない。
例えば、彼女に振られたとき、過去に行って過ちを修正したことがあったけど結局振られた。
親が事故で死んだときも、過去に行って事故を起こした車に乗らないようにしたが、やっぱり別の事故で死んだ。
おれはこれらの能力をもう使わないだろうな。
超能力なんてあっても意味ねーよ。
あほらしい。
ところで、おれはこの能力に関してきっと自分だけの特別な能力なんだと思っていたんだが、
最近同じ能力を持っている人間がいるらしいことに気付いた。
といっても、テレビのニュースなんだが、最近世界各地で政治家が干物みたいにされて死にまくっている。
どんな主義主張の違いか知らんが、能力を使ってテロなんて。
おれにはとってもできねー。
【解説】
『生物の水分を飛ばして干物みたいにする能力』
『過去の世界に戻る能力』
過去に世界に戻る能力が語り手にあることから、
未来の自分が世界各地で政治家が干物にしていったと考えられる。
しかし、ちょっとここで不思議な点がある。
『彼女に振られたとき、過去に行って過ちを修正したことがあったけど結局振られた』
『親が事故で死んだときも、過去に行って事故を起こした車に乗らないようにしたが、やっぱり別の事故で死んだ』
過去に戻ったとしたら語り手は二人いないとおかしい。
なのに、彼女の話からして、
語り手は一人しか存在していないように思う。
つまり、『過去の自分』に戻っていて、
語り手が二人存在することはできないのだろう。
そして気になるのが歴史は変わらないと語り手は言っているが、
それは結果論の話で彼女にしてあげたことはもちろん、
事故で言うと別の事故であるためそもそも犯人が変わっているはずである。
となると、やはり『歴史は変わる』と言えるのではないだろうか?
それに気付いて語り手が過去に戻って…
というパラレルワールド…と言っても、
さっきの話で語り手は二人存在しないと考えてしまったので、
この話も通用しない。
ただ
『生物の水分を飛ばして干物みたいにする能力』
この能力をどうやって知ったのだろうか?
誰かに使わないとわからないはずである。
『歴史は変わらない』
と言いつつ、
過去の自分に干物みたいにする能力を使ったとしたら…。
最初は歴史は変わると思ったからこその行動を起こしたとしたら、
過去の自分を殺してでも変えたいと思うかもしれない。
そうやって自分自身を殺して『歴史は変わっている』のではないか…。
結局テロの理由とかもわからなかったけど…
『歴史は変えられる』のであれば、
もしかしたら彼女自身が同じ能力を持って、
意地でも語り手と別れたかったのかもしれない。
そして、彼女がテロを…?