この逃走生活も、
何日目になるだろうか。
部屋を飛び出て数日、
卸した貯金は底を尽きかけている。
北海道を飛び出て、
当てもなくヒッチハイクで逃げ続ける毎日。
野宿にも随分慣れたものだ。
もう追ってこないだろう。
そう確信していた。
しかし、アイツの視線を急に感じた。
恐ろしく冷徹な、
獲物を見定めるかのような視線。
逃げ始めた時の恐怖心が甦り、
背筋が凍る。
「カギョヌ…ク……キカオケクマエカケハ…モコケカキウニキケゲラクコキレナカクココイ」
あいつの不気味な声が聞こえて、
体の芯まで恐怖で染められる。
やばい、やばいやばいやばいやばい!!
逃げなければ!
そう思って俺はくるりと踵を返し、駆け出した。
「…ソックカコケチ…カニコケク…ミケコチハ…キキキナコカイク」
あいつが喋ったような気がしたが、
気にかけている余裕はない。
無我夢中で走っている最中、
突然体がフワッと軽くなったように感じた。
――昨晩未明、○○市の郊外の山で、男性の死体が発見されました。
【解説】
『カギョヌ…ク……キカオケクマエカケハ…モコケカキウニキケゲラクコキレナカクココイ』
の『カギョヌ…ク』はカ行抜く。
なので、カ行を抜いて読んでみると
『キカオケクマエカケハ…モコケカキウニキケゲラクコキレナカクココイ』
↓
オマエハモウニゲラレナイ
↓
お前はもう逃げられない
続きの言葉
『…ソックカコケチ…カニコケク…ミケコチハ…キキキナコカイク』
↓
ソッチニミチハナイ
↓
そっちに道はない
となる。
『無我夢中で走っている最中、
突然体がフワッと軽くなったように感じた』
これは山の崖から落ちたのだろう。
「そっちに道はない」
って親切に教えてくれているようにも見えるけど、
どうなんだろう?