彼女とつまらないことでケンカした。
原因は、まぁ、俺が浮気したせいなんだけども。
どちらにもばれないようにうまくやったつもりだったのに、
先にばれてしまったのは浮気相手の方だった。
浮気相手は一度も俺を責めることなく、
アパートの自室で首を吊って死んでしまった。
俺はいたたまれなくなって、
事の次第を彼女に洗いざらい話した。
そして、もう誰とも付き合うつもりはない、
お前とも終わりにしたいと告げた。
彼女は泣いて、俺を「人殺し」と罵った。
俺は見ていられなくなって、
彼女に背を向けた。
本心としては、
さっさと部屋から出て行ってほしかった。
俺をひとりにして欲しかった。
彼女はテーブルに合鍵を置いて、
そのまま部屋を出ていった。
俺扉の鍵を占め、
そのままソファに深く座りうつむいた。
冗談じゃなく、
今は誰ともいる気がしない。
恋愛したいとも思わない。
考えすぎて頭痛がしてきた。
背後から回された腕の感触で目が覚めた。
どうやら眠ってしまっていたらしい。
「…戻ってきたのか?」
俺の問いかけに、帰ってきたのはただ一言。
「やっぱり、ずっと、一緒にいたい」
そして、少しだけ腕の力が強くなった。
【解説】
彼女は合鍵を置いていき、
扉の鍵を閉めたため、彼女は入ってこられない。
そして、
『やっぱり、ずっと、一緒にいたい』
と言っていることから、
死んだ浮気相手が後ろにいて首を絞めて
語り手を殺そうとしている。
幽霊になってからも首を絞めて殺すとか
なんて物理的…。
触れることができるなら、
殺さなくても一緒にいれるのでは?
なんて思ったが、悪霊化してそうだから無理か…。