先日、よく当たると評判の
【うらないのやかた】に行ってきた。
うらないのやかたと言うわりには、
民家の一部を…ってな感じで、
黒のスーツにサングラスをかけたイカツイお兄さんが、
占い師の所まで案内してくれたのだが…
本当に当たるのかな…
部屋に通させると、
「「はじめまして…あなた…苦労してますでしょ?」」
この館の女主人、
マダムイガズが私の顔を見るなり
いきなりそういい放った。
その瞬間、
ああ…。この人は本物なんだ…
っておもった。
「は、はい…。実は…」
「「…やっぱり…。
ワタシにはあなたの全てが視えています…。
結論から言うと、暫くここに通えば大丈夫ですが…
さぁ…楽になるためにも話してごらんなさい…」」
「は、はい…」
私はマダムイガズに今悩んでることを吐き出した。
私が話終わると、
マダムイガズが口を開いた。
「「そうですか…。
水晶玉で全て視えていましたが、
実際に聞くとお辛い感情がひしひしと伝わってきますね。」」
マダムイガズは私にそう言うと、
ある物を渡してきた。
そして…
「「あなたは今日からそれを
肌身離さず身に付けていなさい…
それには私の念が込められています。
どこにいても私の分身があなたを守って
必ず幸せを運ぶでしょう。
もし良いことがおきたら、
お代はその時で結構…
また…予約をとっておいでなさい…」」
マダムイガズのうらないのやかたは
一回2000円…
そしてこのお守りは8000円…
高いけど、
マダムイガズの力は本物だもの。
救われるならそれくらい…
…それにしてもこのお守り?みたいなやつ、
本当に効くのかなぁ…
そんなことを思いながら歩いていると、
一台の車が私に向かって突っ込んできた。
私はもうダメだ!
そう思いその場にしゃがみこんでしまった。
(ドン!!!ガシャーン!!)
…あれ
痛くない…
それもそのはず、
突っ込んできた車は咄嗟にハンドルをまげたのか、
私のすぐ横の電信柱に突っ込んでいたのだ。
ドライバーも無事だったみたい。
…すごい。
このお守りのおかげっ?!
その日から私に次々と災難が起こった。
スリにあったり、痴漢にあったり
しかしスリにあったその日の夕方、
すられた物が家のポストに入っていたり、
痴漢にあった時なんかすごくカッコいい男の人に助けてもらって、
メアドGETしちゃったりと…
す、すごい!!
マダムイガズは本物なんだ!!
私はウキウキしながらバイト先に向かった。
私のバイト先はカフェ屋さん。
制服に着替え、
店内を見渡すと…
…ん?!あの人…
マダムイガズ?!!
いや、でも…
ん…?
一緒にいる人、
もしかしてあのスーツの人?
私はマダムイガズ?に近づいた。
暫く見ていると
何か話しているようだった。
もう少し近づくと…
あ!この声!
確かにマダムイガズだ!
私はお守りのお礼を言おうと
マダムイガズに話しかけた。
するとマダムイガズは…
「「…コーヒーのおかわりはいらないわよ?
っていうか、
あなたさっきからジロジロ見てるけど、なに?」」
え…っ
「あ、あの、」
「「あなた、店員でしょ?客に対して失礼よ!
常連ならまだしも、
ジロジロみられる筋合いなんてないわ!」」
「も、申し訳ありませんでした。」
「「いきましょ!」」
マダムイガズは怒って
店を出ていってしまった。
私は次に行くときに謝ろうと思い、
制服に入れたお守りを握った。
…ん?
なんだろ…固いものが…
私は中を確認した。
っ!?
こ、これ…
そしてあることに気づいた。
さっきのマダムイガズの言葉…
そして、このお守り…
私は仕事を早退すると、
急いであるところに向かった。
【解説】
マダムイガズは詐欺師であり、
当然偽物であった。
『はじめまして…あなた…苦労してますでしょ?』
といい放って、
語り手はそれで「本物」と認識したけれど…
"苦労して悩んでいるから占いをしにきているんですが…"
という話で…
そこに気づかないくらい
語り手は疲れ切っていたのだろうか…
とりあえず、
びっくりするくらい騙されやすそうである…
マダムイガズからお守りをもらってから、
語り手に次々と災難が降りかかる。
・車が突っ込んでくる
・スリにあう
・痴漢にあう
でも、どれも結局大きな被害にはならなかった。
語り手はマダムイガズの力を信じているので、
これらは全てお守りのおかげだと思っていた。
そして、バイト先で偶然マダムイガズを見かけるが、
その語り手に対して
『あなた、店員でしょ?客に対して失礼よ!
常連ならまだしも、
ジロジロみられる筋合いなんてないわ!』
と全く気づいておらず、
語り手を初対面の相手だと思っている。
『ワタシにはあなたの全てが視えています…』
と言っていたような人が
語り手の顔をそんな簡単に忘れるだろうか…?
『私は次に行くときに謝ろうと思い、
制服に入れたお守りを握った』
『…ん?
なんだろ…固いものが…』
実はお守りの中に入っていたのはGPS発信機だった。
マダムイガズは
語り手の場所を知ることで、
語り手に災難を降り注ぐと同時に
お守りが守ってくれたと思わせるようにしていた。
しかし、これで語り手は今までの災難はマダムイガズの仕業だとわかり、
『私は仕事を早退すると、
急いであるところに向かった』
警察署へと向かった。
ただ、お守りが8000円、
占いが2000円と考えると、
これまでやってきたことの方がお金がかかるだろう。
となると…
何度もうらないのやかたに訪問させて、
その度に高額のものを売りつけていく予定だったのだろう…
語り手も騙されやすそうなので、
気がついたら借金してでも購入していたかもしれない…