ある日の帰り道。
俺は右側に野口のいない事に少々物足りなさを感じていたが、
今はあいつなんていないほうがいい。
清々する。
野口は俺の幼なじみで
家も近所なのでどこにいっても
大抵は一緒に帰路につくのだが
今日は2人で山奥のひみつ基地に遊びに行っていた時
ちょっとした些細な事で
あいつと大喧嘩をしてしまった。
そして頭にきたおれは
あいつのコンプレックスなことや、両親がいない事とか
とにかく自分でもちょっとやり過ぎかなって思うくらいに
暴言を吐き捨てた。
するとあいつは俺を睨みながら
ひみつ基地を飛び出していった。
俺はもしかしたらと思って少しの間そこで待っていたが
あいつは戻ってこなかった。
最初はいらいらして、何も思わなかったが
今になってちょっとやり過ぎたかなと自分でも思えてきた。
いや
けどダメだ。
あいつが悪いんだから
俺から謝る必要なんて
なにもないんだから。
それに
こういう時はいつも
あいつから謝ってくる。
多分今回も・・・
と
そんな事を考えていると
俺の右ポケットが
静かに振動した。
ほら。―やっぱりきた。
携帯を右ポケットから取り出し
開いてみると案の定新着メールが一件。
そのメールはもちろん
野口からだった。
―――――――――――――
件:野口
SUb:今日はごめんな
本文:
今日はすまなかった。
俺が悪かったんだ。
いきなりひみつ基地をでていったりしてごめん。
ところで
ひみつ基地で俺の携帯みなかったか?
END
―――――――――――――――
やっぱりあいつはいいやつだ。
俺は心のそこから親友だと思った。
まぁいつもの事だが。
俺はひみつ基地をでてから
そう時間も経っていなかったし
距離もそう遠くはなかったので
俺は仕方なく探しに行くことにした。
ひみつ基地につくと
俺はおもむろにその周辺を探し始めた。
しかし
携帯は一向に見当たらない。
サイレントマナーにしているのか
電話をしても鳴る気配すらない。
何かがおかしい。
しばらくして
俺はあることに気がついた。
途端に俺は出口へと走りだした。
逃げなきゃ。
逃げなきゃ殺される。
【解説】
『俺はあることに気がついた』
語り手が気がついたことは
『ひみつ基地で俺の携帯みなかったか?』
と携帯をなくしたはずの野口から
メールがきていること。
それで語り手は
「携帯を無くしたというのはひみつ基地に誘い込むための口実では?」
と考えた。
ひみつ基地に誘い込む理由は語り手を殺すため。
だから語り手は最後に
『逃げなきゃ殺される』
と逃げようとしている。
『サイレントマナーにしているのか
電話をしても鳴る気配すらない』
ここから
「携帯がここにはないのでは?」と考え、
「だとしたら、あのメールの本当の意図は
ひみつ基地に誘い込むため…」
とでも考えたのだろう。
実際に野口が語り手を殺そうとしているのかはわからない。
ただ、
『あいつが悪いんだから
俺から謝る必要なんて
なにもないんだから。
それに
こういう時はいつも
あいつから謝ってくる』
という文を見ると、
親友と思っていたのは語り手だけで、
野口は語り手に見下されてたとか、
そういう黒い感情もあったのではないかと思う。
となると、ここで爆発しても
おかしくはなさそうだ…。