これは数年前に俺が田舎の実家に帰ったときの話。
「ごめんごめん。うん、そう。じゃあよろしくね」
突然帰ると電話で伝えると
お母さんはすこし慌てるような怒った口調で話してきた。
無理もない、
ここ東京からはるばる北海道まで帰るのを
わずか2日前に伝えるあほなんて俺くらいだろう。
でもなんでいきなり帰るかって?
これはご両親に挨拶ってやつだ。
彼女をつれて帰るとなると
予定を合わさなくてはならない。
故に突然できた休暇を使って帰郷しようという話になり
いまさっき電話した次第だ。
飛行機の時間はあっという間に過ぎ去り、
親に会うだけだというのに緊張してしまっている。
しかし緊張しているのは俺だけではなかったみたいだ。
彼女はがぶがぶ水を飲んでいる。
かわいいやつだ♪
なんやかんやでタクシーを捕まえて懐かしの実家に到着すると
2人は、ふうっと息をつき同時に玄関前へと足を運んだ。
ピンポーン、ピンポーン
「あれ、おかしいな」
そう言ってドアを引くと
どうも開きそうだ。
ゆっくりとドアを開けると次の瞬間、
脳の最深部にまでこびりついてくるような臭いがし、
俺と彼女は軽く立ち退いた。
しかしそんなことはしてられない。
これは腐乱臭というやつだ。
本能で事態を理解したかのように
俺はいつのまにか靴を履いたまま
臭いのするほうへと走っていた。
半泣きになりながらリビングに目をやると、
ついに俺は膝を地面に落として泣き崩れた。
彼女も泣いてくれている。
俺の両親はリビングで死んでいた。
死後かなり経っているようで
みるも無惨な姿になっていた。
すぐさま警察に電話しようと、
実家の家電を使って電話しようとしたが、見当たらないため
しかたなく自分の携帯から掛けることにした。
しかし俺はそこであることに気がついた。
警察にかけるまえに
俺はあるところへかけた。
「もしもし…」
「!!!!!!!!!」
俺は彼女の手を取って逃げた。
【解説】
語り手が連絡をいれたのは2日前。
しかし、
『死後かなり経っているようで
みるも無惨な姿になっていた』
とあるように、
親は2日前に電話をとれる状況ではない。
では、2日前の電話は何だったのか?と思い、
警察に電話する前に今いる実家に電話をかけてみた。
すると、
「なんで目の前にいるのに電話してくるの?」
といったような感じで返ってきて
語り手は怖くなり一目散に逃げ出した。