10日前、家の前で変な箱を拾った。
不審物として警察に届けるべきだと思ったのだが、
好奇心から家へ持ち帰った。
中身はパズルだった。
リアルな模型が作れるようだ。
不気味なものが好きという、
一風変わった趣味を持つ娘に見せてあげようと思ったのだが、
その日娘は帰ってこなかった。
8日前、右腕が完成した。娘は帰らない。
6日前、左腕が完成した。娘が帰らないので警察に捜索願を出した。
3日前、左足が完成した。昔馴染みの警察官が捜索してくれているが見つからない。
2日前、右足が完成した。「最近変わったことはないか」と初対面の警察官から聞かれた。
押収されたくないので不審物の事は言わなかった。
昨日、胴体が完成した。娘に会いたい。
本日、パズルが完成した。
娘も帰ってきた。一安心だ。
相変わらずテレビは誘拐や殺人事件などの不穏なニュースだらけだが、
今日は私にとってはいい日だ。
【解説】
『中身はパズルだった。
リアルな模型が作れるようだ』
このパズルは娘の遺体だった。
パズルが完成したら娘が帰ってきたと言っているのもそのため。
『「最近変わったことはないか」と初対面の警察官から聞かれた』
昔馴染みの警察官がいるようだし、
初対面の警察官とも言っていることから
警察官には顔馴染みの人が多いのだろう。
そこに突如現れた初対面の警察官。
犯人が警察官を装い、
語り手の様子を探りに来たか?
わざわざ家の前に置いたのだから、
語り手がショックを受けた顔を見に来たのだろう。
ただ、この語り手は妙に落ち着いている…
『相変わらずテレビは誘拐や殺人事件などの不穏なニュースだらけ』
このニュースは語り手の娘のこと?
ただ、
『昔馴染みの警察官が捜索してくれているが見つからない』(3日前)
とあるから娘のニュースともちょっと言いづらそう。
「相変わらず」ということは、
結構前から不穏なニュースが流れていそうなので。
犯人は同じようなことを何度も行っている
連続殺人鬼なのかもしれない。
そういう連続殺人鬼がいるというのはもちろん怖いが、
語り手も恐く感じてしまう。
パズルが娘だったとわかっても、
語り手は喜んでいる。
色々と壊れてしまったか?
それとも…
遺体としても帰ってこないと思っていたが、
こうやってパズルを完成させることで遺体が戻ってきたことに喜んでいる?
なんとなく、パズルを組み立てている様子が
黒魔術を行っているようにも見えなくない。
バラバラにされた娘の遺体を繋ぎ合わせてできた娘らしき遺体。
それに喜ぶ親を想像すると
なんとも居たたまれない気持ちになってしまう…