僕は医者から、2週間前自転車で走行している途中
車にひき逃げされたと教えられた。
長い間入院していたからか、家までの道のりを忘れていた。
だから何とか医者から聞こうとした。
「君の家にはお母さんがいるじゃないか。迎えに来てもらいなさい」
と言われたけど僕は電話番号も忘れていた。
家に帰ったら血まみれの洋服が床に落ちていた。
僕がひかれた時の洋服だろうか。
しかし、僕はこんな洋服、見たことがない。
怖くなって洗濯機に放り込んだ。
その後テレビを見た。
テレビの音が聞こえた。
「昨日、50代女性の死体が見つかりました。
刃物で刺された後があり、解剖結果、約2週間前ほど前に、
何者かが殺害したと検察側は見ています。
そのまた先日にも同じ地区で2名、
50代と40代の女性が殺害されており、
犯人は同一人物の可能性があると推測しています。
また、犯人は現在も逃走中とのことです」
また怖くなった僕がテレビを切ると同時に電話が鳴った。
「もしもし」
「よう、元気か?・・・」
知らない声の主だった。声がとても低かった。
「誰ですか?」
「俺だよ俺・・・」
もしかして僕を殺そうとしているのだろうか。
怖くなったからすぐ電話を終わらせようとした。
「本当に誰ですか?間違い電話ならもう切ります」
「おまえの家に行くからさ・・・。待っててね・・・」
そこでガチャッと電話が切れた。
怖いからお風呂場でずっと隠れていた。
誰も来なかったからもう寝ることにした。
寝室に行くと誰か寝ていた。
血まみれの女の人が寝ていた。
腐敗しているようだったけど顔は見えた。
それなのに僕はその人が誰だか分からなかった。
【解説】
ニュースの犯人は語り手。
被害者が殺害された時期と車に轢かれた時期が
『2週間前』と同じである。
寝室の遺体は母親で。
ニュースに出ていた被害者よりも前に殺したのか
後に殺したのかはわからないが…
母親を殺して壊れてしまったのだろうか?
ちなみに電話の相手は意味深に見えるが、
これはただ単に友人である。
語り手が記憶喪失であるために
誰だかわからなかった。
記憶喪失の怖さかな、
と思うところがある。