一人旅で乗った小さな客船で、
船縁から夜の海を眺めてロマンに浸っていると、
船長さんに声を掛けられた。
若くて割とルックスもいい。
軽く色めきたちつつ適当に話をしてて、
「船のお仕事って大変でしょう」とか
「そうでも無いですよ?女性だとそう感じるかも知れませんね」とか
色々聞かせてもらって、
このまま寝室に呼ばれないかなとか
淡い期待も抱いたけど残念ながらそんな事も無く(笑)、
夜も更けてきた頃に船長さんはそろそろ部屋に戻ると言い出した。
でも、最後にこんな意味深な事を呟いた。
「女性が一人で夜の船縁に居るのは危険なんですよ。海に呼ばれるから」
その時は良く解らなくて、そうですかーって適当に相槌打って先に寝室に戻った。
でも翌朝、大騒ぎしている船員達に何事かと事情を聞いてみて仰天した。
船長が船縁から身を投げたらしい。
ちょうど自分と別れたあの後。遺書は無かったと。
その時、船長の最後の言葉が浮かんできたよ。
「海に呼ばれる」
って。
【解説】
船長が女性だった、というオチ。
船長は女性で
『女性が一人で夜の船縁に居るのは危険なんですよ。海に呼ばれるから』
ということもわかっていた。
そのため、船長も呼ばれる可能性があったのはずなのだが・・・
「私は気が強いから海に呼ばれても動じない!」
とか、自分は人と違うとでも思っていたのだろうか?
「自分は詐欺にあわない!」
と思っていて、詐欺にあってしまう人と似た傾向がありそうだ。
「自分は大丈夫」
という認識は不幸な結末になってしまうことがあるのでご注意を!
ちょっと気になるのは
前半は「船長さん」
後半は「船長」
語り手が変わっているのだろうか…
変わっているようには見えないのだけど…。