あたしのパパはとっても優しい。
あたしのことだいじにしてくれる。
料理も上手でおいしくて
あたしにいつも
「かわいいよ、すきだよ」
って言ってくれる。
あたしはそれが嬉しい。
…だけど時々
あたしの身体を見て
パパは悲しそうにもする。
「やせすぎだね…」
って。
あたしはそれが悲しい。
ドアの向こうには
怖い怪物がたくさんいるから
あたしは毎日音楽をきいたり
パパのお人形をながめたりしてる。
パパのお仕事はお人形を作ることなの。
冷たいケースのなかに
きれいなお人形が
たくさん。
いち、に、さん、し、ご…ろっこも並んでる。
あたしの顔より少し大きな
きれいなお顔。
いろんな髪の毛。
パパが一番好きなお人形は
黒髪に大きな目
真っ白なお顔のお人形。
とりだしてうっとりした顔で
「なかじまさん、なかじまさん」
って。
だけどあたしが好きなお人形は
なかじまさんじゃない。
あたしが好きなのは
茶色い髪で細い目をしたお人形。
このお人形を見てると
へんなきもち。
パパがこのお人形と
似てるねって言ってたから
そのせいかなぁ。
パパがね、
なかじまさんばっかり見てるから
さっきなかじまさんを
怖い怪物のところに捨てたの。
窓から投げて
すぐにしめちゃった。
パパが好きなのは
あたしだけじゃなきゃ
嫌なの。
捨てたらすぐに
怖い音がいっぱいした。
やっぱりドアの向こうには
怪物がたくさんいるんだね。
もしかしたら
ちょっと
ほんのちょっとだけ
パパは怒るかもしれないけど
きっとすぐに
「かわいいよ」
って
許してくれる。
今日のごはんはなにかなぁ?
おいしいお肉だったらいいな。
【解説】
続きを読む