脳死が確認され、
無数のチューブと人工呼吸器や点滴により生き続けた。
しかし死んでしまった。
「すみません。手を尽くしたのですが」
医者はとても悲しげな顔で告げる。
彼の亡き骸を抱いた時、
とても軽く、苦しかったんだと思った。
「治療費は結構です」
決して裕福とは言えない私の状況を察し、
なんて優しい医者なのだろう。
私はすぐに泣いた。
「遺体を見るのは辛いでしょう」
お医者さんがシーツを被せた。
「思い出は彼と共に焼いて忘れなさい」
この一言で私は立ち直れたのである。
【解説】
彼の亡骸はとても軽かったとあるが、
なぜ軽くなっていたのだろうか?
それは、医者が臓器を抜き取って売却したから。
治療費は臓器売買による収入で回収したのだろう。
『遺体を見るのはつらいでしょう』
というのは、実は医者が遺体を見られたくないから。
すぐにでも火葬してもらいたかったのだろう。