私のクラスにはタロット占いが得意な女子がいる。
一見地味でなんの取り柄も無さそうな彼女の元には、
休み時間毎に誰かしらが彼女を求めてやってくるのだ。
私は正直、それが鬱陶しかった。
あの娘が転校してくるまで
私がクラスの中心だったのに...!
ーーーある日ーーー
町をぶらぶらしていると、
古びたお店のドアの張り紙が目に入った。
「予言カレンダー、あります」
予言カレンダー?
気になった私は、
お店に入ろうか迷っていた。
すると、
「何かお探しですか?」
店主らしき人が話しかけてきた。
「あの、これ...」
と張り紙を指差すと、
あぁ、これですか?
と紙の束を渡してきた。
(ただのカレンダーじゃん)
そう思っていた私に、
「これはただのカレンダーではありません。
その日、あなたの周りで起こる
すべての出来事が書かれている予言カレンダーなのです」
中を見ると
日付、曜日、日記らしき文章がびっしりと書いてあった。
店主「今日のところを見てください」
ー ヒナタミサキ 18時30分 無くしていた財布見つかる ー
(私のこと?でもあの財布は1年以上も前に無くしたんだけど)
疑わしい...
何で名前と時間まで書いて...
チャララ~♪
母から電話だ。
母「あ、ミサキ~?
さっき警察から電話があって、
前に無くしたって言ってた財布、見つかったって~」
!!
他の日はどうなっているんだろう?
とページを捲ろうとすると、店主に制止された。
店主「予言を見るのは必ずその日になってから...
1日分の予言しか見ないこと。
守れるなら差し上げますよ」
私「...わかった、約束する」
店主「貴女の幸せを願っていますよ...」
そう言い残し店主は店の奥に引っ込んでいった。
ーーー次の日ーーー
早速カレンダーを使って友達を"占って"みた。
それが当たると評判になり、
瞬く間に噂は広まった。
タロット占いをしていた子は、
ただのタロット好きとして扱われ始め、
皆私のところへ群がるようになった。
一人の女子が相談に来た。
「告白したんだけど
一週間待ってくれって言われちゃって...
気になって夜も眠れなくて...」
確かに彼女は目の下に隈を作り、
不安そうにしている。
でも先を見てはいけない。
私「ごめん。占えるのは今日の出来事だけなの」
女子「そっかぁ。
ミサキちゃんでも無理なんだね。
ちょっとがっかり...」
その言葉に少し苛立った私は、
(一週間ぐらい先を見たって平気だろう)
と、カレンダーの先を見て告白の返事を彼女に伝えた。
彼女「なんだぁ、心配して損しちゃった!
ミサキちゃんありがと♪」
彼女は上機嫌で帰っていった。
その後も一週間後先、
一ヶ月後先と依頼が増え、
その度にページを捲っていった。
(なんだ...先を見たからってなんも起こんないじゃん)
と油断していた。
母に買い物を頼まれ、
歩いて向かうことにした。
(今日はとくになんもなかったよな~)
とカレンダーを開いてみる。
あれ?昨日こんなこと書いてなかった!
ー ヒナタミサキ 13時47分 踏み切りで事故死ー
13時...あと10分しかない!
でも踏み切りさえ通らなければいいんだよね...
私は急いでUターンし、
別の道を行くことにした。
次の角を曲がると
あれ?こんなとこに踏み切りあったっけ?!
猛ダッシュで別の道へ
戻ってる...!!
道を変えてもどうしても同じ踏み切りに辿り着いてしまう。
振り返り別の道を行こうとした私の足がもつれ転んでしまった。
「えっなんで??」
誰かが足を引っ張っているような感覚のまま、
ズルズルと踏み切りの方まで引きずられる。
うそでしょっ?!
そんなっ!
えっ...ちょ...
キキーーーーーっ
ガタンゴトン...ガタンゴトン...
「だから先を見るなと言ったのに」
一部始終を見ていた女は
そう呟いて去っていった。
【解説】
未来を見てしまったがために
死んでしまった語り手。
「占い師は短命」と言われることがあるようだが、
それはこういった説があるからかもしれない。