ある日、
目が覚めると私は幽霊になっていた。
少し取り乱したが、
すぐに落ち着いた。
昨夜、一緒にベッドに入った夫の姿と
私の死体が見あたらないので
家の中を探すことにした。
夫は私と今年で7歳になる娘のことをとても愛している。
勿論、私も2人のことを愛している。
そんな彼をリビングで見つけた。
夫はソファーに深く腰掛け
苦しそうな表情をしていた。
私は、夫が私で
いっぱいいっぱいになっていることに気が付いた。
そこに娘が起きてきた。
「おはよう、あれ?お母さんは?」
「おはよう。
お母さんは少し遠くに行っているけど、
すぐに同じところに行けるからね」
その日の正午過ぎ、
夫は娘でいっぱいいっぱいになっていた。
【解説】
夫は語り手と娘のことをとても愛していた。
そのために夫は
語り手でいっぱいいっぱいになり、
娘でいっぱいいっぱいになった。
いっぱいいっぱいとはどういうことか?
語り手をお腹いっぱいに食べ、
時間が経ってお腹が空いた後、
娘をお腹いっぱい食べた。
愛する人を食べた夫は
このあと満足するのだろうか?
それとも後悔するのだろうか?