妊娠したのを期に結婚して半年。
もともと料理は苦手と言っていた妻だが、
まさかこんなにヒドイとは思わなかった。
金に不自由はさせてないから、
きっと食材はいいものだと思うのに、
どうやったらこんなにも全ての料理が同じ味になるんだろう。
いや、そうは言っても見た目は全然悪くないんだ。
むしろ見た目だけなら、
色鮮やかで綺麗に盛り付けられていて、
レストランで出て来てもおかしくないほどなんだ。
そこは絵の才能に長けた彼女らしい。
美的センスってやつだ。
今日も新しい絵の具を買ってたな。
だが、いかんせん料理はマズイ。
簡単に言うと、味なんかほとんど無い。
今日の夕飯のミネストローネとパエリア。
具沢山な真っ赤なスープと
沢山の魚介の乗ったキレイな黄色いご飯。
サフランだっけ？
アレでキレイな色が付くんだよな。
でも、そんな凝ったもんじゃなくてイイから食える飯をくれ、
ってのが正直な所。
まあ、新婚だしそんなこと言えないから、
毎食頑張って食べるけどね。
できれば子供が産まれるまでに、
もう少し上達してほしいもんだ。
数ヶ月後、無事子供が産まれ、
妻にも家族ぐるみで付き合うママ友ができた。
今日はその友達一家を招待してパーティーだという。
妻の料理は相変わらずなのだが大丈夫なのか心配だ。
友人 夫『うわ！メッチャうまそうじゃんか！』
そう、見た目は本当にうまそうなんだよ。。
友人 妻『本当！やっぱり彩りって大事ねー！』
友人 夫『見た目だけじゃないぞ。
いただいてみろよ。うまいなぁ』
お世辞でも言いづらいだろうに。。
あいつイイ友達をもったなぁ。。
友人 妻『本当においしいわ！
子供ももうおかわりしちゃったわよ！』
おいおい、その子の味覚大丈夫か？
友人 妻『あ、あの絵あなたが描いたんでしょ？
ステキね～』
妻『ふふ、ありがとう。
でももう一年位描いてないから久々にまた描いてみようかしら』
友人 妻『できたら見せてね。
ところでご主人、どお？』
妻『ん。意識はあるんだけどね。
もう身体はほとんど動かないの』
。。そう。。
子供を一度も抱けないまま、
俺は寝たきりになってしまった。
俺の面倒はヘルパーさんにしてもらっているが、
食事だけは変わらず妻が作ってくれている。
優しい妻だ。
だがもう、ありがとうすら言えない。。
【解説】
妻が作っていた料理は
全て絵の具で着色されていた。
そのため、色鮮やかだが、
全ての料理が同じ味になっている。
しかし、友人家族がおいしく食べているように
妻は本当は料理上手。
妻は語り手を殺すために
絵の具を食べさせ続けていた。
食事に洗剤を入れていた話も実際にあるし、
陰で何を入れられているかわからないと考えると恐ろしい…
