私は、自画自賛と言われるかもしれないが、
そこそこ名知れた物書きだ。
最近、
『弟子になりたい』と志願するものが現れ、
私はそれを承諾した。
目を見張る才覚を秘めた、
素直で従順で、なにより私の作風を理解していた。
その若き才能を受け、
弟子が来てからというもの、
新作を出すたび、世を騒がす話題になり、
私の名はさらに広まっていった。
***********
「今話題の小説家、
塩史氏が自殺したとの情報が入りました。
弟子の××氏の緊急会見です」
『師匠は作家人生を謳歌したでしょう。
かつての文豪の多くと同じ最期を迎えたのですから。
亡き師を仰ぎ、師の弔いの意味を込め、
私、【××太二】は氏の名字を拝借し、
【塩史太二】と名乗らせて頂くことを、
この場を借りて申し上げます』
塩史太二の作品は、
師の○○氏が乗り移ったかのように、
素晴らしい作品を次々と発表し、
見事に師の意志を受け継いだ、と
○○氏の友人・ファン共に認められる小説家となった。
【解説】
弟子は師の作風に似ていて、
師のゴーストライターとして活動していた。
そして、師が有名になったところで殺し、
話題と注目をかっさらった中で
表舞台に立った。
弟子の名前は「塩史太二」
「しおふみだいに」
つまり、
「師を踏み台に」
となる。