「あっついなぁ…」
俺は誰に言うでもなく、
ぽつりとつぶやいた。
応える声などあるはずがないのに、
無意識のうちにつぶやいていた。
今年の夏は、とにかく暑い。
とろくなものを作る気にもならず、
つい夏バテになりそうだ。
現在俺は、それなりに大きな一軒家で、
独り暮らしをしている。
一軒家で独り暮らしなんて
贅沢だといわれるかもしれない。
だが家の裏は古い墓地で、
お世辞にも雰囲気のいい場所ではない。
それに……
去年までは暖かな家庭があり、
妻の作る栄養バランスの摂れた料理があったのだ。
妻が何も言わず、
突然俺の目の前から姿を消したのは昨年の秋頃だった。
優しくて料理上手な、
良くできた妻だった。
それ以来俺は、
この家で一人っきりの慣れない生活を送っている。
やはりそれも寂しくなってきたので、
仕事の休暇を利用して明日からは、
田舎の実家に帰省することにした。
一週間の帰郷を経て久しぶりに家に帰る。
「ただいまぁ~」
癖は抜けないもので一人でそう言いながら、
鍵を開けて家の中に足を踏み入れた時。
俺は激しく寒気がした。
なんだろう…?
違和感を覚えながら家の奥へと進み……
すべてを理解し、俺はゾッとした。
【解説】
一週間ぶりに家に帰ると寒気がした…
その理由は
エアコンがつけっぱなしだったから。
一週間もつけっぱなしだったので
そこそこ電気代もかかってしまう。
一軒家であれば
一週間で1万円くらい?
ただ、電気代よりも
エアコンがつけっぱなしだったという事実に
愕然としそうである。
個人的には
「自分がいないのにエアコンをつけっぱなしで、
何か不都合なことが起きたりはしていないか?」
と考えてしまうから。
まぁ、考えたところで
火事にもなっていないから
基本問題ないんだけど。
『妻が何も言わず、
突然俺の目の前から姿を消したのは昨年の秋頃だった』
これについては単純で
妻に愛想を尽かされて出ていっただけ。
愛想を尽かされて
何も言わず姿を消すって相当だなぁ…