突然、謎の組織に連れ去られ、
謎の空間に閉じ込められた。
真っ暗で何も見えない。
一緒にいた友人はどうなったんだろう。
同じく捕まったのだろうか。
「君にはゲームをしてもらおう。
なぁに、簡単さ。
この真っ暗な空間で、空間内の人間を殺せばいい。
ちなみに、この空間には君を含め二人の人間がいる。
さて、この空間内にある拳銃を見つけ出し、人を殺してごらん。
生き残った方を出してあげよう」
「なんて悪趣味なんだ」
しかし、こういうゲームの展開はだいたい決まっている。
どーせ、この空間にいる人間ってのは俺の友人なんだろう。
カツン、と音がした。
足に何か当たったのだ。
触れてみると、
何か冷たくて固いものだった。
なんてこった。
先に俺が拳銃を見つけてしまった。
本当に、友人を殺せば俺は助かるんだろうか。
いや、駄目だ。
あいつは大事な友人なんだ。
殺せない。
俺には彼女もいないし、
両親とは仲が悪い。
彼女もいて、
両親から愛されている友人が生き残るべきだ。
俺は拳銃をくわえ、
カチリと音を立てる引き金に触れた。
パン!!パァン!!
銃声は2つ聞こえ、
見ず知らずの男が生き残った。
【解説】
『この空間には君を含め二人の人間がいる』
つまり、この空間には
語り手と『見ず知らずの男』しかいない。
友人なんて実はいなかった。
しかし、語り手は
相手が友人だと思い込み、
自殺をしようとした。
見ず知らずの人は
『なんて悪趣味なんだ』という言葉や
最後に引き金を引く音によって
語り手の位置を把握し発砲。
語り手は自殺するために発砲。
そのため、銃声が2つ聞こえ、
見ず知らずの男が生き残った。
見ず知らずの人は
殺すつもりで撃ったのか、
それとも
「引き金を引いたということは、俺を殺す気だ!」
といった正当防衛で撃ったのかはわからない。
見ず知らずの人にとって
「相手は自殺した」
とは考えづらいだろうから、
「自分が殺したんだ…」
という想いを胸にこれから生きていくのだろう。
その生き方もまた
地獄のように感じる。