臨戦状態の隣国の軍師から、
一通の封筒が届いた。
「軍師様!大変です!」
「どうした、何事だ」
「ハッ!敵国の軍師から
“暗号書”と書かれた封筒が送られてきました!」
「舐めた真似を……
私をこの国随一の軍師と知っての狼藉か……
して、その内容は?」
「それが……」
「どうした?早く言え」
「それが、封筒の中には一枚の白紙が入っているだけで……」
「なんだと?」
「これがその暗号書でございます」
「本当に白紙だな……炙り出しではないのか?」
「先ほど試しましたが、何の変化もなく……」
「むむむ……これは私への挑戦状と受け取った。
私はこれからこの暗号書の解読のため、自室に籠もる。
決して邪魔するなよ」
「ハッ!」
この二日後、
隣国による襲撃でこの国は壊滅的打撃を受けた。
敵兵に殺される間際まで解読をしていた軍師は、
ようやく暗号書の意味を理解した。
【解説】
軍師はプライドが高いことを知っていた敵国の軍師は
解読できない暗号書(おそらくただの白紙)を送りつけ、
それに没頭させるように仕向けた。
それにハマった軍師は
解読できない暗号書に時間を費やしているうちに
作戦も立てられずに無抵抗でやられてしまった。
何の作戦も立てられずに
無抵抗でやられてしまうような軍師なのだから、
『この国随一の軍師』というのは
あくまで自称だったのではないだろうか…。
こんなことでやられてしまうなら
解読できない暗号書を送りつけられなくても
負けていたのではないかと思ってしまう。