【意味怖】意味がわかると怖い話まとめ

【意味怖】意味がわかると怖い話を読んで頭の体操を!捉え方は人それぞれであり、答えは一つであるとは言えません。解説も答えではなく、一つの捉え方。あなたがどう捉えたかを教えていただけると幸いです。


【意味怖】ロボットが持つ記録

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『カチ……』

 

「記録開始。

現在時刻八時零分。

気温、湿度、気圧、全て平常。

これより、NA-016との“対話”を開始する。

NA-016、前日二十三時零分から本日七時零分までに見た情景・事象を正確に述べよ」

 

『パチン』

 

[対話を開始します。

昨夜二十三時零分、NA-016こと私は思考・動作停止状態に移行。

五分二十秒後、私は三日月・電柱・塀・道路を視認。

視覚情報から、某所の住宅街路地に直立していると判断]

 

「続けて」

 

[私は塀に挟まれた路地を直進。

プログラムによる指示のない自己判断行動。

一分十秒後、後方に音源を確認。

音源の正確な発生源を確認するため、視覚センサーを後方へと向ける。

後方に人間の男性を確認。

音波は男性の靴から発せられたものと判断。

視認から零コンマ70秒後、男性が歩幅を広げて私へと接近する。

男性の右手には刃物と思しき物を確に――――]

 

「おい、どうした?

NA-016、対話を続けよ」

 

[――――本日零時三十分四十秒、前方に仰向けに横たわる女性を確認。

腹部から多量に出血しており、絶命寸前と判断できる。

自機に搭載された緊急医療システムの始動を試みるが動作不能。

十五秒後、視界が塞がれ緩やかな上下振動を感知する。

五分五十秒後、私は一コンマ20秒滞空し、アスファルトに接地する。

二秒後、一定速度で離れていく音源を確認。

視覚・聴覚共に一切情報の入らない空白時間が続く。

四十八分後、近付いてくる音源を確認。

音源は私から約20cmの距離まで接近し停止。

四秒後、視界が回復、正面に浮浪者と思しき長髪の男性を確認。

再び視界が塞がれ、屑鉄の山らしきものに落下、金属の擦れる音が鳴り続け――――]

 

「ん?またか。

NA-016、対話を続けなさい」

 

[――――ここはどこかの工場……?

私の身体はベルトコンベアに流されている。

奥に見えるアレは、ロボットかしら……]

 

「なんだ?様子がおかしいぞ?

おい、一旦中止だ」

 

『パチン』

 

[ロボット……死なない身体……

素敵ね……]

 

「おい、停止されてないぞ!

どうなってるんだ!」

 

[復讐してやる復讐してやる復讐してやる復讐してやる復讐してやる復讐してやrrrrrrrrrr

 

「緊急停止だ!早く緊急停――――

 


『カチ……』

 

 

【解説】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初の路地の内容は、

通り魔に殺された女性の記憶。

 

そのため、

男に刺されたところで記憶が途絶えている。

 

その次の記憶は、

女性を刺した刃物の記憶。

 

無機質な刃物に刺された

女性の霊魂が乗り移ったと思われる。

 

刃物は通り魔の男に捨てられ、

その刃物を浮浪者が鉄くずとして回収し、

熔かされて元の金属となった。

 

最後の内容は、

意思が宿った金属がロボットの部品となり、

工場内のコンベアを流れている。

 

女性が持つ通り魔への憎悪から、

ロボットの死なない身体を使って

復讐を果たそうとしている。

 

最初と最後にある

『カチ……』

という音は録音機のON、OFFを切り替える音。

 

 

仮にこのロボットが復讐を遂げたとしても、

心が満たされることはないだろう。

 

となると、

その後はどのようになってしまうのだろうか?

 

ロボットの身体になってしまったことを呪い、

周りを壊し始めたりするのだろうか?

 

この後の展開が気になるところである。