友達から電話が来る。
中学校から高校まで一緒の親友だった。
良い奴だったな、と思い返す。
しかし世渡りが下手だった。
現に今俺は良い会社で良い地位を持っている。
それに比べてあいつときたら
怪しい組織に入っているなんて噂を聞いた。
ただの噂だろうと思っていたが…。
電話に出る。
「やぁ、久しぶりだな」
『あ…あぁ。久しぶり…』
「どうしたんだい?えらく元気が無いね」
俺は不思議に思う。
『そう…かな?…』
「なんだ?何か用があるんだろう?」
『う…うん…』
「はっきりしないなぁ。
さっさと言ってくれよ!」
『わかった。よく聞いてくれ。
僕はもう君とは会えなくなる』
俺は呆然とする。
「…え?」
『仕事の都合でもう君と会うことが出来なくなるんだ。
君とは親友だったから。
今までありがとう。さようなら…』
「ま…待て!?どういうことだい?
まさか噂は本当だったのか…?」
『…。ゴメン。さようなら』
電話が切れる。
どういうことだ?
彼はやはり怪しい組織に所属していたのか…?
たしか、経済を裏であやつるだかなんだかという組織らしいと
これも噂である。
まさか彼は何か大きな事件を犯してしまい
逃亡するつもりなのか?
しかしもっと恐ろしいことが思い浮かぶ。
彼はまさかその組織に消されるのではないか?
なにかへまを起こしてしまったのかもしれない…。
そう考えると
彼の「さよなら」には何か深い意味があった気がする。
助けなければ。
彼は死ぬ前に親友の俺に別れを告げたのだ。
放っておけるわけが無い。
体が震えるがやるしかない。
ただ、何が出来るだろう…?
そうだ!彼を俺の部屋にかくまってやろう。
どんな組織の奴が来ようと隠し通してやる。
「安心しろ!待っていろよ!!」
そう呟いて彼の元へ急ぐ…。
【解説】
親友は怪しい組織に入っていた。
その組織は経済を裏で操っている。
そして、語り手は良い会社で良い地位を持っている。
つまり、語り手は経済に影響を与えている存在。
経済を操る際に語り手が邪魔になり、
組織は語り手を消すことにした。
親友の『さようなら』は
自分ではなく、語り手がこれから消えることに対する言葉だった。
語り手はなんとか親友を助けようとするものの
親友は組織に従って、語り手が消えるのを受け入れる。
悲しい話である。