俺がホームレスになってどれくらい経つだろう。
決してふぬけた生活を送っていた訳ではない。
高校でサッカー部のキャプテンだった俺は、
高校卒業後、東京の国立大学に進学。
その後、大手金融会社に勤め、
決して金持ちという訳ではないが、
充実した毎日を送っていた。
しかし、22歳の転機が訪れる。
友人の保証人になってしまったがために、
多額の借金を背負う事に。
一気にホームレスになった。
ふざけるな。
俺はまだいける。
この社会の役に立てる。
そんな憤りを覚えながら、
毎日を虚しく過ごしていた。
だが、神は俺を見捨てなかったのだ。
ある寒い番の事だ。
俺の目の前に、
ヨボヨボの老人が現れ、
俺に話しかけてきたのだ。
「選ばれし者よ。
よく、長い間試練に耐えたな」
「あ、あんたは?」
「そんな事はどうでも良い。
これから、逆境の中でもひたむきに生き抜いてきたお前に、
ある能力を授ける」
「能力…?」
「うむ。これから後、
両手を何かにつけて発言した事は、現実となるだろう。
だが、決して、己の私利私欲を暴走させるではないぞ」
そう言い、彼は去っていった。
こんな事、信用できない。
だが、3日間何も食べてない俺には、
これしかチャンスがないのだ。
俺は、地面に両手をつけ、叫んだ。
「食い物をくれ!」
奇跡が、起きた。
さっきまで何もなかった寝床に、
お握りが落ちていたのだ。
1ヶ月後、俺は都内のレストランで働いていた。
あの不思議な能力を使って、
俺はやっと普通の暮らしを送れるようになったのだ。
もちろん、金が欲しい!とか○○が欲しい!と言ったら、
それは実現する。
でも、そんな事俺はしない。
恩人であるあの老人との約束を破ってしまうからだ。
そして、思う。
今の日本は腐っている。
原発、拉致問題、自殺…
解決しなくてはならない問題は山積みなのに、
政治家達は平々凡々と暮らしている。
日本を何とかしなくては。
もし俺が国のリーダーだったら、
日本を変えられるのに…
待てよ、もし、も?
そうか、そうすればいいのか…
10年後
鏡の前で俺はネクタイを絞める。
国会議員になる、という事を実現させてから、早10年。
そこから、あの能力は使わず、
自分の力で総理大臣になった。
今日から、
俺が日本のリーダーとなるのだ。
「大臣、演説の時間です」
「うん!よし、俺達で国を変えよう!」
演説会場へと向かいながら、
この10年を振り返る。
あの老人のお陰で、
俺の人生は180°変わった。
今度はこの能力を、国民の為に使おう。
そして、日本を変える。
勢いよく、演説台に手をつき、
俺は高らかに話し始める。
「国民のみなさん、こんにちは。
本日より、日本国大統領になりました、上山村雄大です!
みなさん!一緒に!日本を!変えましょう!」
【解説】
『両手を何かにつけて発言した事は、現実となる』
願いを叶えるのではなく
発言したものが現実となる。
語り手は演説台に手をつき、
『上山村雄大です』
と言った。
雄大
ユーダイ
You die
このYouは「あなた」を表すYouではなく、
「不特定多数の人」を表し、
「日本国民のみなさん」に反応してしまって
語り手以外の国民が死んでしまう。
さらに、
『上山村雄大です』
と「です」は「death」を表し、
語り手も死んでしまうだろう。
この演説によって
日本国民は誰もいなくなってしまった。
発言したことが現実となる能力は
こうやってみるとかなり怖い…。
というか、判別しているのは何者なのか。
「です」の発音は「death」ではないだろうに…。
【おまけ】
元々あった間違えて貼っていた文章を
ここに貼っておきます。
みなさま、ご指摘ありがとうございました。
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僕はお母さんが大好きだ。
でもある日弟が生まれた。
その日からお母さんは
僕じゃなく弟ばかりを可愛がっていた。
そこで僕は弟に嫉妬し
弟を殺す事にした。
僕はお母さんが寝ている間に
お母さんの乳首に毒を塗って
お母さんが朝ごはんの時に弟に母乳をあげる時を待った。
翌朝に僕は弟の様子を見にお母さんの寝室に行った。
僕は驚いた。
寝ているお母さんの隣で
お父さんが死んでいた。