某所に手のつけられない荒くれの死刑囚がいて、
看守達もほとほと手を焼いていた。
そこで、神父様が呼ばれた。
その神父様、なかなか良く出来た人で、
彼と独房で会う時に、
聖書の中に小さな紙切れをしのばせていた。
最初は、
『声を出すな。お前を救う作戦がたっている』
とか言う感じで。
彼はそれを見て、神父はグルだと思って、
自分のボスが助けてくれると確信していた。
会う度にメモが増えていった。
『作戦は順調』とか、『もうすぐだ』とか。
そして、最後の日に渡されたメモにはこう書いてあった。
『作戦決行は、最後の瞬間』
彼にとってこの世で最後の日。
最後の夕食を食べ、
神父に最後の祈りを聞いてもらい、
看守に引き連れられて電気椅子に向かい、
最後に顔の前にカバーがかけられる瞬間まで、
彼は笑顔だった。
彼の死後、
「一体、荒くれだった彼を、
どうやって大人しくさせたのか」
と問われた神父は、
その看守に答えました。
「私は彼に『希望』を与えたんです」
【解説】
死刑囚は最後まで神父の嘘を信じたため、
最後まで笑顔だった。
作戦決行は最後の瞬間。
つまり、死刑が執行されたとき。
『希望』という嘘を与えたため、
死刑囚は笑顔のまま死んでいった。
手段はどうであれ、
希望を持ちながら最後まで笑顔でいれたのであれば、
死刑囚は幸せのまま死ねたと言えるかもしれない。