A男「この景色、どこかで見なかった?」
B男も足を止め、口を開く。
B男「そういえば…うん。
確かに見たことあるような気がする」
A男「はて…いつだったかな?」
B男「さあ…覚えてない…
ってことは、これってデジャヴだよね」
A男「…うん。デジャヴだ」
しばしば沈黙の時が流れる。
A男「なあ」
B男「うん?」
A男「今考えてたんだけど、
この景色、実際にもう何回も見てるよな?」
B男「そんな…」
A男「間違いないよ。
俺達もう何回も、ここでこうやって立ち止まって、
同じような会話をしてるんだよ!
そうだろ?お前もそう思うだろ?」
B男「やめてくれよ!これはデジャヴなんだよ!
君だってそう言ったじゃないか!
実際は見てないのにそんな気がするだけさ!
デジャヴなんだよ!」
A男「いい加減にしろ!
そう言いたい気持ちは分かるさ。
だが、いくらなんでも負けを認めろよ!
心の中では分かってるはずさ!
これはデジャヴなんかじゃないって!」
B男「…」
A男「さあ、もう意地を張るのは、やめろよ」
B男「うん…でも…」
A男「俺だって認めたく無いが現実だ」
B男「分かってるよ。でも悔しいんだ。
いったいどうなっているんだ?
もう限界だよ…」
A男「そんなこと言われたって…
しょうがないだろ?
もう3日もこうやってるんだから…」
2人はまた口をつむぐ。
そして2人は重い足を引きずりながら、
あてもなく、再びこの樹海を歩き始めた。
【解説】
樹海で遭難してしまった二人。
認めたくなくて『デジャヴ』なんて言っていたが、
さすがに限界で遭難したことを認めた二人。
3日も歩いて
ずっと『デジャヴ』だと言い続けたことがすごいが…。
果たしてこの二人は出られるのだろうか?
3日も歩き続けたのであれば、
そろそろ限界が近いように思う。
食べ物はある程度あった?
この2人はどうなるかはわからないが、
自分がこの立場になったらと思うと恐ろしい。
…そもそもこういう場所には近寄らないようにしたいものだが。