リリリリリン、リリリリリン…
電話が鳴っている。
誰だろう?
「はい、もしもし?」
「もしもーし、有紀だよー。久し振りー!」
「有紀?ほんと久し振り~」
冷蔵庫を物色しながら感嘆の声をあげる。
彼女は美人なのに気取らない性格で友人が多い。
でも私が一番の親友なんだよね。
「美香、最近どう?何かあった?」
「特に何にも。有紀こそ何かあった?」
本当は二年三ヶ月と17日続いてる彼氏が、
友達と浮気してるんだ。
悲しんでしまうだろうからまだ言わないけど。
「実は私ね~、彼氏ができたんだ!」
「そうなの?おめでとうー!」
「それでね、美香に紹介したいなーって思ってるんだけど…」
ポテトチップスを食べていた手が止まる。
行かない方がいい。
きっと悲しくなるだけだから。
「親友の美香だから、
一度会って正直な感想言って欲しくって」
「うーん、そう言われると断れないなぁ…」
「良かった!じゃ明日一時にいつものお店で」
「了解です、じゃあ明日ね。おやすみなさい」
珍しくあっさり電話を切って、歯を磨く。
やっぱり断りきれなかったな。
明日はイタリアンか。
ウエストが0.8センチも増えたけど大丈夫かな?
さて、そろそろ寝ようか。
「明日も早いし今日はもう寝よーっと!」
おやすみなさい、
と声に出して私はラジオを消した。
【解説】
語り手は
有紀と美香以外の3人目。
語り手は美香の部屋を盗聴し、
「」内以外の言葉は美香への気持ちと
盗聴によってわかる美香の行動である。
最後にラジオを消したのは、
ラジオによって盗聴していたから。
友達に盗聴されていると知ったら、
人間不信になってしまいそうである…。