私の家には、
前の住民が置いていった三面鏡が和室にある。
前は気味悪がっていたが、
今ではお気に入りだ。
鏡をどんなにみていても飽きない。
何かわからないが、鏡には魅力があった。
私はいつも通り右手でくしを持って
髪をとかしながら鏡を見つめる。
ピンポーン
チャイムがなりハッとして玄関に向かった。
宅配便の人だった。
判子が見当たらないからサインにしよう。
左手でペンを持って急いでドアを開けた。
【解説】
『いつも通り右手でくしを持って』
とくしは右手を使っているが
『左手でペンを持って急いでドアを開けた』
と宅配便の人が来てからは
ペンを左手に持っている。
つまり、利き手が変わっている。
宅配便の人が来た時点で
語り手と鏡の中の語り手が入れ替わったようだが、
そうなると、やはり世界も全て逆になっているのだろうか?
それがなんとなく気になってしまう。
それにしても、
三面鏡には色んな話があるから
個人的にはちょっと恐い。