少し昔、田舎の村に老人が一人で住んでいた。
その老人は貧乏で、いつも
「死にたい、死にたい、こんな生活なら死んだ方がマシだ」
と呟いていた。
ある日、老人が山へ薪を取りに行った帰りに罠に掛かった鶴を見つけた。
老人は、「鶴の恩返し」の話を思い出し、お礼目当てで助けた。
鶴は嬉しそうに飛んで行った。
一週間後、未だ現れない鶴に老人はイライラしていた。
その時、コンコンと戸を叩く音がした。
老人は急いで戸を開けた。
…そこにいたのはゴツい大男だった。
老人はあっけに取られ立ち尽くした。
男は甲高い声で言った。
「クロちゃ○でス♪」
老人は更に固まった。
鶴は甲高い声で続けた。
「…以前助けて頂いた鶴です。お礼をしに来ましタ~☆」
我に帰った老人は、鶴(?)を招き入れた。
鶴と名乗る大男はやはり甲高い声で、
「これから奥の部屋を借りるね!覗いちゃだめだゾ~!!」
と言って奥の部屋に籠った。
老人は戸惑うしかできなかった。
それから一週間が経った。
またイライラしだした老人は、
こっそり中を覗いてしまった。
カタン、カタン、と音を立てて
一羽のゴツい鶴が織物をしている。
その織物の美しさに思わず声が漏れてしまった。
老人に気付き、
鋭い目付きで老人を睨む鶴(?)。
「いや~ん!えっちぃ!!」
と言いながら部屋から出てきた。
そして、
「今から恩返しをするネ☆」
と言って織った織物を取り出した。
《やけに長細いな…?しかし、これを売れば!!》
老人はにやけながら手を伸ばした。
「有り難うねッ!」
しゅる…ゴキッ…
老人は死んだ。
鶴(?)は満面の笑みを浮かべて飛び去って行った。
老人は
『死にたい、死にたい、こんな生活なら死んだ方がマシだ』
と言っていたために、恩返しとして老人を殺した。
やけに細長いのは老人を吊って殺すため。
鶴と吊る。
色んな意味で不思議な鶴だが、
正直怪しすぎて家には入れたくないなぁ…。