両親と、彼女との結婚の事で揉めちまったまま出張に出た。
そんなある日、妹からメールがきた。
『おにーちゃんに誕生日プレゼント!
どこにあるか、見つけてられるかな♪』
病気で家にこもりきりの妹は、
たまにこんなイタズラめいたゲームをする。
家に帰ると、玄関には
『靴はちゃんと靴箱に』
と書いた貼り紙が貼ってあった。
もうゲームは始まっているらしい。
書かれた通りに脱いだ靴を靴箱にしまおうとして気づく。
靴箱には俺のスニーカーと、
妹の靴が一足しか入っていない。
両親の靴は妹が隠してしまったようだ。
代わりに空いたスペースにまた貼り紙。
『お風呂でお姫様気分味わって♪』
お姫様って…
俺は男だっつーの。
一人苦笑いを浮かべながら風呂場を開ける。
そして納得した。
浴槽は温泉なんかにあるワイン風呂さながらで、
薔薇の花びらまで浮かんでいた。
浴室の鏡にまた貼り紙をみつける。
『お庭にお花をいっぱい植えたの。
キレイだから絶対見てね』
言われた通り庭を覗くと、
先週までただの芝生だった庭に大きめの花壇ができていた。
なんだ、今回のゲームは
親父やおふくろも一緒にやってんのか。
誕生日祝いっつったって、
よくまぁ俺の出張行ってる一週間でこんな頑張ったな。
仲直りも兼ねてってとこか。
花壇には立札が刺さっていた。
見ると、
『ユカの部屋で待ってるね』
とある。
お、そろそろ探し物ゲームも終わりかな?
妹の部屋の前で声を掛ける。
が、返事はない。
ゆっくり開けると中は暗く、
廊下からの明かりで足元とベッドに腰掛けた人影だけが見えた。
足元には沢山の羽根が散らばっている。
これも演出か。
暗がりの中妹が言う。
『プレゼント見つけられた?』
『いや?全部見てきたハズだけど…』
言いながら部屋の明かりを付ける。
『!!!!!!』
そこにはにっこり微笑んだ妹が、
真っ赤な枕を抱きしめて座っていた。
『もう!最高のプレゼントなのに!』
【解説】
語り手であるおにーちゃんが大好きな妹が
プレゼントとして両親を殺した。
『病気で家にこもりきりの妹』
とあるが、病気は精神的なもの。
枕が真っ赤なことから、
殺害現場は妹の部屋。
枕で顔を覆ってから殺し、バラバラにして
庭に埋めたのだろう。
真っ赤な枕を抱きしめて笑っている妹の姿が
一番怖い気がする…。