涙が一筋私のほほをつたった。
口が微かに開かれる。
息が口から漏れた。
手が力を失い、
掛け布団の上にすとんと音もなく落ちる。
麻痺したかのようにその手は動かなかった。
些細な喧嘩から、
彼を失ってしまった。
泣きつかれたせいか、
枕から頭を持ち上げるのですらひどく疲れた。
これから一仕事あるのが信じられない。
私はどうにか準備を始めた。
シャワーを浴びて、
化粧を新たにし、着替えた。
そして重たい大きな荷物を持って狭い部屋を出た。
【解説】
彼を失った(彼を殺し)、
重たい荷物(彼の死体)を持って
狭い部屋を出た(その死体を捨てにいく)。
彼を失ったとしても
死体遺棄しようとするとはなんとたくましいことか…。