これは僕が高校生の頃の話。
当時、クラスでは授業中に消しゴムをぶつける遊びが流行っていた。
いかに壇上の教師に見付からないように遠くの人を当てられるか、
みんなして競っていた。
教室の一番後ろの席だった僕は、その様子を眺めるだけだった。
なぜ参加しなかったか、って?
だって、誤って先生に当ててしまったら大事になるじゃないか。
ある日のこと、
いつも通り授業も聞かずに消しゴム当ての様子を観察していたら、
僕の後頭部に流れ弾が飛んできた。
頭を押さえながら足元を見ると、
よくある青・白・黒のラインが入った紙ケースの消しゴムが落ちていた。
まったく、部外者に当てるとは何事だ、
と思いながらその消しゴムを拾い、
筆箱の中にしまった。
持ち主が現れたって、
返してやるものか、
なんて考えながら。
その日の夜、僕は物音で目が覚めた。
学校カバンの中からカタカタと音がしているのだ。
無視して寝ようとしたが、
どうも気になって眠れない。
渋々部屋の電気を点けて、
カバンを開けて中を調べた。
もしかしたらゴキブリかもしれないので、
一応殺虫剤を持って。
筆箱の中、教科書の下、体操服の間など、
あちこち調べてみたが何もない。
いつの間にか物音も止んでいたので、
全部カバンに戻して寝ることにした。
翌朝、学校に着いた僕は
筆箱を家に忘れたことに気付いた。
ちゃんと入れたと思ったんだけどな。
【解説】
語り手は
『教室の一番後ろの席』
だったにも関わらず、
『僕の後頭部に流れ弾が飛んできた』
その消しゴムに何かが憑いており、
『学校カバンの中からカタカタと音がしているのだ』
と筆箱の中で暴れていた。
筆箱がカバンの中に入っていなかったのは
消しゴムに憑いていた何者かがカバンから出したため。
筆箱の中から出るために
カバンからなんどか這い出て
筆箱を開けて脱出!
なんて姿を思い浮かべたら
なんだかほっこりしてしまった。