僕には心臓の弱い妹がいる。
彼女はいつも夏には苦しそうにしている。
母さんも父さんも元気がない。
僕も最近妹の看病をする母さんの手伝いで疲れきっている。
だから夏になる少し前、
僕は家族全員にこう提案したんだ。
「空気の良い涼しいところに行く?」
僕の提案に対して妹の首がかすかに振られる。
母さんと父さんも同意してくれた。
二人ともいつも覇気のない顔をしていたけど、
これで元気になるかな。
「じゃあそうしよう」
そう決めると、妹は薄く微笑んだ。
「綺麗だね」
鮮やかな緑と雲一つない綺麗な空。
人気もないし、とても良いところだ。
母さんと父さんは疲れているらしく、
先に行って眠っているらしい。
身体が弱い妹をここにつれてくるのは苦労したけど、
ここなら毎日を楽しく過ごせるね。
「じゃあ母さんと父さんのところに行こうか」
妹は何かから解放されたような晴れやかな顔で頷いた。
【解説】
一家心中のお話。
『空気の良い涼しいところ』
『鮮やかな緑と雲一つない綺麗な空』
とあるため、
心中場所は山の大自然の中で一家心中した。
全員が一家心中を望んでいる形も珍しい。
全員がそんな気持ちになってしまう状態とか、
想像しただけで悲しくなってしまう。