ある男が小さな村に住んでいた。
その村は砂漠の中に位置していたことから
『灼熱のオアシス』と呼ばれていた。
しかし砂漠の旅の重要な位置として、
度々盗賊からの襲撃に見舞われていた。
ある日、大きな襲撃があった。
今回はかなりの人数だ。
村人は皆殺されたり連れ去られたりなどした。
だが男だけは逃げ切った。
左足に大きな傷が残り歩くのにかなり苦労したのだが
逃げ切れただけ良かったのだろう。
村はもうおしまいだ…
手にとったリュックの中には数日分の食料・水が入っていた。
砂漠に出て、助けを探そう。
そう決め、村を右手に後にした。
男はただひたすら真っ直ぐ歩いた。
真っ直ぐ真っ直ぐ、
左足を引きずりながらも歩ける限り歩いた。
何日歩いただろうか…
遠く、右手に何か見える
村だ!!!
小さな村だ。
男が住んでいた村と同じくらいだろうか。
しかし、ここも盗賊の襲撃にあった跡がある。
村人は一人もおらず、
村自身が干からびていた。
男は村を右手に後にした。
それからも男はただ真っ直ぐ歩き続けた。
力の残す限り…
そして、右手にまた村が見えてきた時、男は言った。
『なんだ、そういうことか』
男は安心したかのように目を閉じ、
安らかに死んでいった。
【解説】
左足を怪我して引きずって歩いているために、
真っ直ぐ歩いているつもりだったのに、
グルグルと回っていた。
つまり、同じ村に戻ってきてしまっていた。
自分の村が死に場所だった、
と安心したのもあるのかな、
と思うと悲しくなってしまう。