喧嘩をしたっきり、
夫が出て行ってしまってからもう一年が経つ。
二人の子供達は最初は泣いたり寂しがったりしたものの、
それも大分薄れたのか今も二人仲良く庭で遊んでいる。
そういえば庭の桜の樹が調度満開だ。
花びらが赤くなるなんていうのは迷信みたいで良かった。
そうそう、桜の樹には毛虫が多いから
あんまり近付いちゃ駄目よって注意しなきゃね。
【解説】
『花びらが赤くなるなんていうのは迷信みたいで良かった』
と、迷信なことにホッとしているのは、
語り手が夫を桜の樹の下に埋めたため。
喧嘩の末に夫を殺してしまい、
いなくなったことにして庭の桜の樹の下に埋めた。
毛虫が多いと注意する理由は
子供が近づいて万が一発見されると困るから。
とはいえ、
ダメと言われれば近づきたくなるのが
子供なんだろうけど…