「――と言うわけで、俺の話は終わりだ」
その一言で締め、
最後の蝋燭を吹き消した。
「いやぁ、さすがに100話は長かったな!」
「言い出しっぺが何言ってんだよ。
『今日新月だから百物語やろうぜ!』
って聞いた時は馬鹿かと思ったぞ」
「だよな。
いきなり、俺ん家に人集めろ、だもんな。
こんな夜中によく集まったもんだよ」
「そんで来てみたら、
部屋の真ん中に蝋燭100本立ってるの。
唖然としたわ」
「やるなら本格的にやりたかったからな。
んじゃ、そろそろ電気点けようぜ」
「オッケー、じゃあ俺が……」
「あー違う違う、
それは台所のスイッチ。その隣だ」
「これか?」
パチッ
「お、点いたな」
「結局何も不可思議なことは起きなかったな」
「そうだな。まぁ簡単に怪奇現象に遭遇できるもんじゃないしな」
「どうする?もうお開きか?」
「かな。悪いな、無理言って」
「良いって良いって、結構楽しかったし」
「そんじゃお疲れー」
「おう、お疲れー」
【解説】
百物語は室内の灯りを消して、
蝋燭の灯りだけで行う。
そして、この日は新月で
100話が終わり、
蝋燭も全て吹き消した。
そのため、辺りは真っ暗のはずだが
『あー違う違う、
それは台所のスイッチ。その隣だ』
と、真っ暗な中で
家主はどうしてスイッチを判断できたのだろうか…?
そもそも本当に家主の言葉だったのだろうか…?