僕達A、B、C、Dは仲良し4人組。
家は近所なんだけど、
中学はみんなバラバラになっちゃうんだ。
だからこの夏休み、
僕達は思い出作りの為に
それぞれの家に泊まりっこすることにした。
Dの家は両親共働きで、
海外にいるらしい。
お婆ちゃんが一人で見るのは....
と反対されたけど、
僕達のこういう時の結束力を舐めてもらっちゃ困る。
4人で涙を浮かべて頼み込んだ。
まず1日目は、
4人のリーダー核Aの家。
お母さんがすごい料理上手で
みんなすごい速さですごい量をたいらげた。
お母さん、
すごいびっくりしてた。
2日目はBの家。
Bの家は大家族で、
僕達が驚かされた。
でも、賑やかで悪くないって思った。
寝床はキツキツだったけど。
3日目は僕の家。
僕は一人っ子だから、
お母さんが喜んでた。
いっぱいゲームして、
いっぱい食べて、
いっぱい騒いで、
いっぱい寝た。
あんな嬉しそうな母さん、
久々に見た。
そして4日目、
Dの家。
とうとう楽しい泊まりっこも最終日。
みんな暗い雰囲気になっちゃって、
お婆ちゃん困ってた。
その日の夕方。
早めの晩御飯を食べ終えた僕達は、
暇をもてあましていた。
最終日なのにこのまま終わるのかな？
ってみんな思ってたはずだ。
そんな気持ちを察してか、
Aがある提案をした。
それは、
「肝試し」だった。
お婆ちゃんは7時頃に寝てしまうらしい。
それを見計らって抜け出し、
学校へ行くと言うのだ。
AもBも乗り気だった。
無論、僕も。
ただ、Dだけは反対した。
AはDに
「腰抜け」と言い残し部屋をでた。
Dは悲しそうな顔で、
「オハシサン」の話をしだした。
「オハシサン」とは、
僕達の学校の伝説。
いわゆる七不思議みたいなもの。
良くわかってない伝説で、
僕達も存在以外ほとんど知らない。
何故か知っていたDは、
従兄弟のお兄さんから聞いたらしい。
まとめてみると、
・「オハシサン」が出るのは校舎端の家庭科室
・「ハシよこせ」と襲ってくる
・「お箸」を投げると逃げられる。
・一人でいる時は現れない
と、こんな感じだ。
僕達はAの分の箸も持って、
心配気なDに手を振った。
夜の学校はやっぱり気味が悪い。
僕はフェンスの前でうずくまってしまった。
何て言うか、
「だるい」
Aには散々文句を言われたけど、
僕はここで待つことにした。
軽々とフェンスを越えた2人は、
闇の中へ消えて行った。
それから10分位経っただろうか。
Bが帰って来た。
ひどく顔色が悪い。
Aはどうしたのかと聞くと、
「オハシサンの話をしたら、
ノリノリで家庭科室へ走って行った。
後を追いかけて行ったが、
途中で「ハシよこせ」と聞こえたので
慌てて引き返した。
途中でAの悲鳴が聞こえた気がした」
という。
ここで待っていた僕には何も聞こえなかったけど...。
取り敢えず、
僕は怯えるBをなだめるようにDの家に帰った。
次の日、
朝目覚めてもそこにAの姿はなかった。
瞬間、お婆ちゃんの悲鳴が耳を貫いた。
腰を抜かすお婆ちゃん。
その先のテレビには
学校が映し出されていた。
「昨夜未明、
小学校で少年の遺体が発見されました。
少年はこの学校に通うA君。
何者かに両腕を切り取られた無惨な姿で......」
僕とBはお婆ちゃんにお礼も言わず、
Dに挨拶もせず、
それぞれ家に帰った。
【解説】
Aの分の箸も持っていったはずなのに、
Aは逃げ切れていない。
Bが箸を渡し忘れたか、
それとも
『「お箸」を投げると逃げられる』
ということを伝え忘れたか…
ただ、Dの話だと
『一人でいる時は現れない』
はずである。
しかし、Bは
『オハシサンの話をしたら、
ノリノリで家庭科室へ走って行った。
後を追いかけて行ったが、
途中で「ハシよこせ」と聞こえたので
慌てて引き返した』
とあるように、
Aは一人の時に襲われている。
つまり、
『オハシサン』ではなく、
嘘をついているBなのだろう…
『何者かに両腕を切り取られた無惨な姿で』
どうやって両腕を切り取ったのか
気になるところではあるのだが…
それにしても…
なんだかお婆ちゃんが可愛そうだなぁ…
