俺は今日、
中学の頃の仲間との同窓会に来ている。
15年。
その年月で皆の相貌は変わっていた。
しかし最初はどこか少しよそよそしい雰囲気だったが、
酒も回ってきたせいか級友たちも打ち解け、
懐かしい友との再会を楽しんでいた。
B子「アルバム持ってきちゃった~」
C子「うわ~懐かしい~。」
D男「俺のこの頃の髪型マジダサいなw」
B子が持ってきた中学時代のアルバムをきっかけに
皆は思出話に花を咲かせていた。
俺もその輪に入り
色褪せかけたアルバムの中の行事に嬉々とする
自分達が写った写真を一緒になって眺めていた。
C子「修学旅行だ~懐かしい」
E子「金閣寺の紅葉がきれいだったよね」
F男「うわっこの集合写真俺目を閉じてんじゃんw」
G男「皆この頃と変わってないね~」
皆の話題は
中学2年の学校至上最大のイベントと言っても過言でない
修学旅行になった。
だが修学旅行の記憶を自分の中でたどっていくうちに、
その集合写真になにか違和感を感じた。
なにかおかしい。なにか。
俺「……!こいつ誰だっけ。」
G男「……なんだ忘れたのか?Z男だろ。」
E子「…Z男くん、
海水浴でふざけて沖まで行って戻ってこなかったんだよね。」
G男「すごいいい奴だったのにな」
やはり、おかしい……
Z男は思い出した。
だが他に何かが。
F男「あいつ修学旅行誰よりも楽しみにしてたのにな……」
俺たちはその同窓会を1次会のみで切り上げた。
【解説】
『金閣寺の紅葉がきれいだったよね』
と「紅葉」の話をしているので、
修学旅行は秋。
Z男は海水浴でふざけて沖に流されてしまった。
海水浴なのでそれはおそらく夏。
そして、
『あいつ修学旅行誰よりも楽しみにしてたのにな……』
という言葉。
つまり、Z男は修学旅行前の海水浴で亡くなってしまっている。
にも関わらず、
修学旅行の集合写真に
いるはずのないZ男が写っている。
その恐怖からかそれとも悲しみからか、
『その同窓会を1次会のみで切り上げた』
…死んでからもなお写真に写ろうとするくらい、
修学旅行を楽しみにしていたんだろうなぁ…