「人を殺したことがあるって本当?」
「……本当ですよ」
「人を殺すのって楽しい?」
「……ええ、楽しいです」
「また殺したい?」
「……そうですね、今すぐにでも」
「……嘘つきだな、君は」
彼は間違っている。
俺はひとつしか嘘をつかなかった。
【解説】
①「人を殺したことがあるって本当?」
⇒本当
②「人を殺すのって楽しい?」
⇒楽しい
③「また殺したい?」
⇒今すぐにでも殺したい
『俺はひとつしか嘘をつかなかった』
とあるので、
この中の一つが嘘となる。
①が嘘で人を殺したことがなければ、
③の「また殺したい」というのも嘘となるため、
嘘が2つになってしまう。
②が嘘で人殺しが楽しくないのなら
③のように今すぐにでも殺したいとは思わないので、
これも嘘が2つになってしまう。
つまり嘘は③であり、
『今すぐ』というのが嘘なのだろう。
『今すぐ』に殺したいわけではないが、
後で殺しはしたい。
殺したい相手は話し相手か?
じっくり相手を追い詰めて殺すことが
語り手の楽しみ方なのかもしれない。
ちょっと気になったのは
『……嘘つきだな、君は』
という言葉。
『俺』は話すときに
『……』という含みを持たせているから
「君は実は殺しが好きなわけではないのではないか?」
という考えに達し、
『……嘘つきだな、君は』と言ったのかもしれない。
ただ、なんとなく
「今すぐにでも殺したいなんて言っているけど、
ここには自分しかいないのだから今すぐに殺せるとしたら自分しかいない。
自分を殺したいなんて思うはずがないからこれは嘘だ(フフン♪)」
なんてイメージが沸いてしまった…
ふと思ったことなので、
こういう風に考えていることはないはずだが、
「自分だけは大丈夫」という考え方は危険。
状況は全く違うけれども、
そういう人ほど詐欺に遭いやすいというが、
実際周りで詐欺にあった人はみんな
「自分だけは大丈夫」と考えていた人だったなぁ…