「錆びない体」は女性の憧れ、
有る研究をしている化学者の下に一人の女優が訪れた。
白衣の男が出迎える
「これはこれは、お待ちしておりました」
「挨拶はいいから例の物を頂戴!」
白衣の男は小瓶に入った一つのカプセルを手渡した。
「これで錆びない身体になれますよ」
「本当ね!」
彼女の必死な形相に反して
男は冷静な表情でこう聞き返した。
「本当にいいんですね、錆びない身体で」
「当たり前でしょ!」
帰る女優を見て男は終始無表情だった。
翌日、自宅で女優が死んでいるのが発見された。
「殺しか!?」
「それがおかしいんですよ」
「なにが?」
「変死としか言い様がないんです、
体中の酸素が不足しているどころか全くないんです、
しかも静脈はともかく動脈の血も黒く変色しているんです」
ニュースを見た化学者は言った
「人には錆びてなければいけないところもあるんですよ」
【解説】
錆びない⇒酸化しない⇒酸素がない
つまり、化学者は酸素がなくなる薬を渡した。
鉄が錆びるのは酸素と結びつくからであり、
血液の中のヘモグロビンも酸素と結びつくとこの現象が起きる。
※ヘモグロビンはヘム鉄とグロビン(たんぱく質)から構成されている
ヘモグロビンは
酸素を取り込む(酸化)と鮮やかな赤色になるが、
酸素を送り終える(還元する)とドス黒い赤色に変わる。
そのため、酸素がなくなった女性の身体は
『しかも静脈はともかく動脈の血も黒く変色しているんです』
と、全ての血が黒く変色してしまった。
※酸化した血(鮮やかな赤色)は動脈を、還元した血(ドス黒い赤色)は静脈を流れています
「錆びない身体にしろ」といったため
酸素がなくなる薬を渡した化学者だが
人は酸素がなければ生きていけないわけで…
「老化しないためにもにできる限り酸素をとらないようにしよう!」
とか言っていた人がいたけれども、
あの人はどうなったのかな…
とふと思ってしまった。