私はこの時を待っていた。
あの女が無防備で一人でマンションから出てくるこの時を・・・。
何人の人々があの女の罠に陥り
絶望的な生き地獄を味わっているか・・。
しかし、もう人々が苦しむことは無いのだ
私がこの手でカタをつける!
「警部、あの女しぶとくて動機を何もはきません」
「そうか、被害者の女優だが犯人に怨みでも買われていたのか?」
「いえ『この世の不気味な話』というオムニバスホラードラマでデビューした女優で
確か役柄が『苦しんでいる人々に甘い話を持ちかけて生きたまま臓器を奪う』
組織の女の役です」
私は人々を苦しめるあの女をとうとう・・・・。
【解説】
語り手はドラマの役柄と現実の区別がつかず、
『苦しんでいる人々に甘い話を持ちかけて生きたまま臓器を奪う』
役柄を演じた女優を殺した。
とはいっても、本当にこのような人間性だったとしても
女優を殺す権利はないわけで…
どちらにしても殺人罪を問われてしまうのだが。
それにしても、
『あの女しぶとくて動機を何もはきません』
と言っているが、
本当に犯人は女なのだろうか?
警部が
『被害者の女優だが犯人に怨みでも買われていたのか?』
と聞いているにも関わらず、
急に役柄の説明をし始めている。
普通に考えてそのようなことが怨みになるとは考えないだろう。
となると、この説明している人が
犯人ではないだろうか…?
などと思ってしまう。