あるところに、几帳面な男がいた。
男は会社に行くため、
毎朝6時ちょうどにバス停へ行った。
そこにはいつも女がいて、男と出会った。
ふたりは次第に魅かれあうようになり、付き合い始めた。
ふたりは毎日同じ時間に起き、
食事をし、ベットをともにした。
それは結婚してからも変わらなかった。
結婚50年目のある早朝、女は亡くなった。
老衰だった。
男は、ただ黙っていた。
翌日、男は一人誰もいない部屋で首を吊った。
きっかり、午前6時の出来事だった。
【解説】
男が
『毎朝6時ちょうどにバス停へ行った』
のは几帳面からきているわけではなく、
女と会うためだった。
その女が死んでしまったため、
男はいつも出会っていた
午前6時に首を吊って
天国の女に会いに行った。
しかし、老衰と自殺…。
行き着く場所は異なるだろう。
おそらくこの二人は結婚してから
ずっと一度たりとも離れなかったのだろう。
なので、彼女のいない生活は考えられず、
彼女に会いに行くために死を受け入れた。