最近、近所の公園で猟奇殺人事件が頻発してる。
ロープで絞殺してから目玉をえぐり出し、
空いた眼孔を犯すという惨い事件。
学校からも公園には近付かないように言われていた。
でも私の友達のA子が被害にあった。
塾の帰りに近道しようとして襲われたのだ。
人はあまりに悲しいと涙も出ないんだって知った。
同時に、私の大切なA子にこんな酷い事をした犯人が許せなかった。
だから私は友達と相談して、
私が囮になって犯人をおびき出して捕まえてやろうと考えた。
友達は「危いから警察に任せよう」って止めたけど
小さな頃から親に武道を叩き込まれ、
それなりの自信があった私は無理矢理に頼み込んだ。
最後には友達も折れ、
しぶしぶながら手伝ってもらえる事になった。
深夜の公園の道は真っ暗だった。
月明かりと街灯が無ければ何も見えないに違いない。
初日、二日目と犯人は現れなかった。
そして三日目の夜、ついにそいつは現れた。
後ろに人の気配を感じた私は、
気付かず携帯をいじるふりをしてゆっくり歩いた。
すると突然、私の首に紐のような物が掛けられ、
凄まじい力で絞め上げられた。
でも絞められるのは最初から分かっていたの。
私は振り向き様、そいつに飛び掛かった。
暴れるそいつの肩をアスファルトに捩伏せる。
ナイフらしき物で何度か切り付けられるが、
私は興奮しているからなのか痛みはない。
私がそいつに馬乗りになった所で月が雲間から顔を覗かせた。
か細い月明かりでははっきり見えなかったが、
男の顔は恐らく恐怖に歪んでいたのだろう。
短い悲鳴が聞こえた。
冗談じゃない。
私は今のあんたよりずっと怖かったよ。
【解説】
色々な解釈ができそうであるが、
『私は今のあんたよりずっと怖かったよ』
という言葉は被害者のものであることは間違いないだろう。
話の流れを見ると語り手の発言のように見えるが、
語り手は被害にあっていないはず。
A子よりも前に被害にあっていたとしたら、
『小さな頃から親に武道を叩き込まれ、
それなりの自信があった私は無理矢理に頼み込んだ』
ということはできないだろう。
となると、
『私は今のあんたよりずっと怖かったよ』
という発言はA子のものと考えられる。
ここで、A子がすでに死んでいるか、
被害にあっただけでまだ生きているかの
2つの考え方に別れそうだ。
しかし、
『ロープで絞殺してから目玉をえぐり出し、
空いた眼孔を犯すという惨い事件』
ということからもA子が殺されている可能性が高い。
目玉をえぐり出すのは
殺してから行うからだ。
つまり、A子はすでに死んでいて、
A子が語り手に乗り移り、
犯人は目のない殺したはずのA子のように見え、
短い悲鳴を上げたのだろう。
『ナイフらしき物で何度か切り付けられるが、
私は興奮しているからなのか痛みはない』
というのは、すでにA子に乗り移られていたからと考えられる。