「おい!しっかりしろ!」
温かい液体が、俺の顔に落ちてくる。
生臭い…
多分、血だろう…
「大丈夫だ!
もうすぐ救助隊が来てくれるからな!」
俺は、暗闇でそう叫ぶおじさんに元気付けられた。
数時間後…
「誰かいるか!?」
誰かの声が聞こえた。
「よかったな!
これで助かったぞ!」
おじさんが言う。
そして俺は救助された。
俺はその時、救助隊員に尋ねたんだ。
「俺のすぐ上にいたおじさんは無事ですか?」
しかし、救助隊員は…
「あなたの上にいた男性は、すでに死後硬直が始まっていました…」
【解説】
死後硬直が始まるのは大体2、3時間ほど。
となると、
最初におじさんから励まされた時は
まだかろうじて生きていたかもしれないが、
救助が来た時には確実に死んでいたはずである。
にも関わらず、
『よかったな!
これで助かったぞ!』
と声をかけているおじさん。
自分は助からずとも、
見知らぬ語り手だけでも助けたかったのだろうか。
ただ、これは一体どんな状況だったのだろうと、
ちょっと気になってしまうところである。
語り手が救助されるような状況で、
おじさんが上にいたということは、
語り手は崖のようなところから落ちそうな状態?
ただ、
『生臭い…
多分、血だろう…』
とあることから、
おじさんはなんらかの怪我をしている。
そして、語り手も言っているため、
崖崩れがあったとか、
そういうものがあったのだろうか?