フリーライターの俺は、今、アフリカの某所に来ている。
今回の取材のテーマは「天国に一番近い秘境」。
カタコトの日本語を操る現地人通訳と2人で、
山奥の村に向かっているところだ。
俺たちが村に着くと、ガリガリに痩せた村人たちが出迎えてくれた。
日本人が珍しいのか、それとも元来陽気な性質なのか、
まるで祭りのような彼らの歓迎ぶりが妙に気恥ずかしい。
長老らしき爺さんに挨拶を済ませた俺は、ある小屋へ案内された。
ここは、風呂…だろうか。
長旅の疲れを取ってくれ、ということか。素直にありがたい。
通訳がニコニコしながら言う。
「オ湯、入タラ、ゴ馳走、ナリマス」
風呂の後には宴会か、そりゃあいい。
俺は上機嫌で、薬草のようなものがたくさん浮かぶ湯船に飛び込んだ。
【解説】
『オ湯、入タラ、ゴ馳走、ナリマス』
とは
「お風呂の後に宴会」
ということではなく、
「あなたがお湯に入ったら、あなたというご馳走のできあがり」
という意味。
つまり、語り手自体がご馳走なのである。
薬草のようなものも、
食べるために必要だったのだろう。
(匂い消しとかそういう役割があるとか)
村人がガリガリに痩せていたとあるが、
あまり食べるものがなく、
人をメインで食べていたのだろうか…?
それにしても、実際に人を食べる習慣が
今でも残っているところってあるんですかね?