去年、友人の妹が車にはねられて死んだ。
ひき逃げだった。
犯人はまだ捕まっていない。
その悲しみせいか、去年の誕生日に友人は祝ってくれなかった。
今日の誕生日、友人は久し振りの笑顔を見せた。
そして、誕生日プレゼントがあると言われた。
「直接渡すのは恥ずかしい。紙に書いておくから、俺が帰ってから探してくれ。」
と言われた。
友人が帰ったら、俺はプレゼントを探しはじめた。
すると、友人が置いて行ったのか紙に、
調味料の棚の、お酢の上の段の布の中にある。
と書かれていた。
自分はすぐにそこに行って確かめた。
あの友人が何をくれるのか楽しみだった。
布と一緒においてあった紙には、腐る前に食べてくれ。
と書かれていた。
布の中には俺の大好きなぼた餅がくるまれていた。
まだ食べていないがとても美味しそうだ。
友人には何を返そうかな。
【解説】
友人が書いた紙には、
『調味料の棚の、お酢の上の段の布の中にある』
と書かれていた。
調味料と言えば、
さ・し・す・せ・そ
であり、
お『酢』の上の段なので、
「す」の上の段は「し」
そして、
『布の中』
な・に・ぬ・ね・の
「ぬ」と「の」の中には
「ね」という文字。
つまり、この紙の本当のメッセージは
「しね」 ⇒ 「死ね」
なので、布の中に入っていた
『ぼた餅』はおそらく毒入りで、
語り手を殺そうとしているのだろう。
友人の妹を車ではねた犯人はまだ捕まっていない。
その犯人が語り手であると、
友人は判断したのだろう。
なので、
『去年の誕生日に友人は祝ってくれなかった』
この時にすでに疑っていたのかもしれない。
語り手が本当にひき逃げの犯人なのかどうかはわからないが、
大好きなぼた餅はすぐにでも食べてしまいそうなので、
語り手は死んでしまうだろう。
それにしても、友人から
『直接渡すのは恥ずかしい』
なんて言葉は普通言われないだろう…。
友人としては、
直接言えないとしても、
「死ね」と間接的にでも
語り手に伝えたいほど憎んでいたと言える。
まぁ、殺すくらいだしね、うん。