またAから電話がかかってきた。
仕事で悩んでいる、人間関係で悩んでいる…
と何かにつけて死にそうな声で
「相談に乗ってくれ」
と電話してくる。
大した事でもないのに、こっちも忙しいんだよ。
最近は、もうじき挙げる結婚式の準備で特に忙しいのに。
今日の相談の内容は、
「気になる人ができたが、きっかけをつかめない、どうすればいいだろう」
だと。
お前いくつだよ。いい加減にしろ。自分で考えろ。
俺はわざとでたらめなアドバイスをした。
さすがにおかしいと思って、自分で調べるようになるだろう。
数週間後、またAから電話が来た。
「ありがとう、お前のおかげだ。式には来てくれ。次はお前の番だな」
え？ もう結婚!? 展開早っ！
と、俺がびっくりしてるうちに、電話が切れた。
【解説】
『お前のおかげだ』
は
『でたらめなアドバイスをしてくれたおかげで、
気になる人に振られてしまった』
と、でたらめなアドバイスを鵜呑みにしたのだろう…。
『さすがにおかしいと思って、自分で調べるようになるだろう』
と言っているくらいなので、
相当変なことを言ったに違いない。
相手がトラウマになるような、
下手したら捕まるような
そんなことをアドバイスしたとも考えられる。
『式には来てくれ。次はお前の番だな』
語り手はもうじき結婚式を挙げるが、
その語り手よりも早く式を挙げることは
どうも考えづらい。
となると、これは結婚式ではないのだろう。
『何かにつけて死にそうな声』
とあったので、
今回振られたことで疲れ切ってしまい、
自殺をすることを決意。
なので、
「”お葬式”には来てくれよ」
ということなのだろう。
そして、
『次はお前の番だな』
は死んでから語り手を呪い殺すつもり、
もしくは
「お前のせいで死ぬことになったんだから、
お前もそれを悔やんで後追いをしろ」
という意味かもしれない。
『ありがとう』
も結局は
「お前がでたらめなアドバイスをしてくれたおかげで、
俺は自殺することを決めたくらい追い込まれたんだよ」
という意味を込めた皮肉でしかない。
