最近、暑くて寝苦しい日が続いてるよな。
うちのアパートは古くてエアコンなんて豪勢なもんは付いてない。
一人暮らしだしこれで充分と思ってたんだが、
扇風機すらない環境だと二階の部屋はもはや蒸し器だ。
そんなことを会社で先輩に愚痴ってたら、
なんと先輩が扇風機をくれると言う。
どうやら新しい扇風機に買い換えるらしく、
古い方をタダで恵んでもらった。
早速その日のうちに貰ってきたんだが…なるほどかなり古い。
動かすと羽根はガタガタ鳴るし、風量設定なんてないし、
タイマーは今時珍しいゼンマイ式(つまみをひねるタイプのやつ)だ。
でもこれが案外バカにできたもんじゃない。
スイッチを入れると心地よい風がちゃんと吹いて来た。
タイマーをかけてそのまま横になると、
これまでの寝苦しさが嘘みたいに眠りにつくことができた。
で、あまりにも心地よい眠りについていたせいで、
今日の朝起きたのは普段の起床時刻のプラス30分。
もう顔を洗う暇さえなく、着替えて速攻で家を出た。
鍵をかけるのを忘れなかった自分を褒めてやりたいくらいだ。
そんなわけで朝から冷や汗をかいたんだが、
昼になったらなったでまた強烈な暑さだったもんだから一日中汗だくだった。
さっき帰ってきて、鍵を開けるなりすぐに扇風機くんの前へ。
スイッチを押すと汗まみれの顔面に風が吹き付ける。生き返るわー。
今年の夏は扇風機頼りになりそうだ。
【解説】
『タイマーは今時珍しいゼンマイ式(つまみをひねるタイプのやつ)だ』
扇風機は古くゼンマイ式。
なので、タイマーが切れてしまったら、
スイッチを押しただけでは付かず、
つまみをひねらなければならない。
にも関わらず、家から帰ってきても
つまみをひねらずにスイッチだけで扇風機がついている。
タイマーをかけて寝ているため、
確実に切れているはずなのに。
となると、語り手が留守の間に部屋に誰かが入り込んで、
扇風機をつけていたと考えられる。
そして、もしかしたら部屋のどこかに隠れているのかもしれない…。