20XX年、クローン技術が一般化していた。
主な目的は臓器等のスペアで、一部の富裕層がそれを利用していた。
クローンは五感を遮られたカプセルの中で育つため、
自我を持つことはなかった。
『自我を持たない人間は、人間に非ず』
倫理的にはこう定義されているため、この育成方法がとられていた。
ある夜、一人の子供が急患で運ばれて来た。
その子供は内臓を損傷しており、
両親はクローンによる移植手術を希望していた。
怪我の原因は、両親が共働きで不在中、
子共達がふざけ合っている内に階段から落ちたらしい。
看護士が急いでクローンを手術室へ運ぶ。
その途中でクローンが目を覚ました。
その瞳があまりにも可愛いかったので、看護士が思わず、
「遺伝子的には全く同じなのに可哀想…」
「遺伝子ってなあに?」
【解説】
『クローンは五感を遮られたカプセルの中で育つため、自我を持つことはなかった。』
にも関わらず、
『遺伝子ってなあに?』
と答えているため、自我を持っている。
そして、五感が遮断されていたのであれば、
話すこともできないはずである。
つまり、階段から落ちた子供はクローンではない。
クローンは
『一部の富裕層がそれを利用していた。』
とのことだが、
『両親が共働きで不在中』
と、共に働いていることから、
お金に余裕がないように思う。
仮に富裕層の共働きだとしても、
お手伝いさんくらいはいるものだろう。
(それは偏見なのだろうか…?)
クローンではないのに、
『遺伝子的には全く同じなのに可哀想…』
ということはおそらく双子の片割れ。
『両親はクローンによる移植手術を希望していた』
この双子の片割れをクローンにし、何かを企んでいた?
それとも本当にクローンがいたが、
クローンだと思っていた子供が
本当の子供だったとでもいうのだろうか?
『遺伝子ってなあに?』
内臓を損傷しているにも関わらず、
元気そうに質問をしているのがなんか怖い。