中世、ある国に死人使いがおり人々を苦しめていた。
とはいっても、襲ってくる理由は人を殺す目的ではなく金品目当ての強盗だ。
ところが領主の馬車が死人に驚き暴走して崖から転落してしまった。
領主の息子は怒り国の王に訴えた。王はこれを聞き一計を案じた。
「城に必要な人物が病気で亡くなった、しかしいないと困る!
生き返らせたものには姫を妻にすることを命令する!」
この言葉に死人使いがやってきた。
「姫を妻にできるというのは本当で?」
「うむ!」
カーテンをあげると輝くように美しい娘が白いドレスをまとって立っていた。
死人使いの目の前におぞましい死体が置かれた。
『こんなのゾンビにしてもすぐ崩れちまう・・まぁ姫をいただいたら逃げれば』
死人使いは腐り果てた死体を呪文で生き返らせた。
「どうでしょうか?」
「うむ、そなたはもう下がってよいぞ」
王がそう言うと後ろにいた娘が下がった。
「!?」
死人使いが驚いていると
兵士が死人使いの周りを取り囲んだ。
「約束が違います!」
「あれは領主の娘だ!」
王はそういうとこういった
「姫はお前の目の前におる!」
【解説】
『城に必要な人物が病気で亡くなった』
『姫はお前の目の前におる!』
つまり、亡くなって、ゾンビとなった者こそが
姫であった。
死人使いは
『約束が違います!』
と騒いでいるが、王は
『生き返らせたものには姫を妻にすることを命令する!』
と『命令』している。
王は強制的に死人使いと結婚させることが目的であった。
領主の娘を姫だと思わせて、
結婚をほのめかすとか…
なんともずる賢い王である。
しかし、姫の顔を知らないということは
どういうことなのだろうか?
単純に顔を出していなかっただけなのかもしれないが、
『城に必要な人物』
という言葉から、もしかしたら
”いてくれるだけで良い置物”
のように思っていたのかもしれない。
そうなると、ゾンビとしてでも
”存在”さえしていてくれれば
問題ないことになる。
また結婚も世間の目としては良いということだろうか。
まぁ、結婚したとなると次の王が…
ということも出てくるので、
いずれは処分するつもりか?