彼には霊感があった。
戦争や殺人のあったところに行くと、必ず見る。
霊なのだろうそいつらは大抵血走った目やうらめしそうな目をしてじとっとこっちを見ている。
今日彼は仕事でとあるビルにいた。
彼の職業はただの会社員なのだが今日は出張いつもとは違うビルであった。
彼はそのビルに入ってすぐに確信した。
このビルでは過去に殺人事件が起きているな、と。
彼は少し憂鬱になった。
見慣れているとは言え正直霊なんて見て気持ちのいいもんじゃない。
さくさくと仕事をこなし部屋から出た。
見る前に帰ろう。
自然と早足になる。
彼は廊下を曲がってすぐ落胆した。
どうやら避けられはしないらしい…。
男の霊が目の前にいる。
霊は目を見開いて、ナイフをにぎってる。
口の周りは不自然に赤く、ナイフにはもちろん血糊。
今まででも最悪にショッキングな霊。
勘弁してほしいよな、と慣れた手つきで手で追い払おうとした。
…手が触れた。
目の前の男はナイフを振りあげた。
【解説】
『…手が触れた。』
つまり、霊ではなく、本物の殺人鬼であった。
『このビルでは過去に殺人事件が起きているな、と。』
悲しくも過去ではなく現在進行形で殺人事件が行われていた。
それにしても、霊と現実の人の見分けがつかないほど、
はっきり見えるというのは、
生活しててどのように感じるのだろうか…。
『霊なのだろうそいつらは大抵血走った目やうらめしそうな目をしてじとっとこっちを見ている。』
大抵ということは、普通に見えるような人もいる?
間違って霊に道を聞いたりはしないのだろうか…?
霊感があると対応はできるのかもしれないが、
正直ない方が良いと思ってしまうのは私だけであろうか…。
霊感があると考えなくても良いようなことで考え込んで、
怯えてしまうのだから…。