俺は幼い頃に母を亡くした。
だから母の顔は遺影の写真しか知らない。
母は事故死だと聞いている。
男手一つで俺を育ててくれた父も一年前、病に倒れ最近亡くなってしまった。
父の遺品を整理しているとフィルム式の一眼レフカメラが出てきた。
叔母に聞くと父は写真が趣味だったらしい。
あまりに俺が興味を示すから、
「写真の才能がある」と父はフィルムを入れたままのカメラを俺に与えたらしいが記憶にない。
幼い俺は急にカメラに触らなくなったみたいだ。
叔母に了解をもらってカメラをもらった。
レトロな一眼レフは味がある。
フィルムがまだ入っていて、2、3枚撮られていた。
残りがもったいないのでそのフィルムを使い切ることにした。
風景などを撮ってフィルムを使い切り現像にだした。
最初の幼い俺が撮ったであろう写真が楽しみだった。
訳の分からないものが写っていた。ピントがずれている。
全体的に黄色とも茶色とも言えない色。はじっこが銀色。
銀色の部分には赤い模様が付いていた。
ナイフを持った男がアップで笑っている写真だと気づくのに少し時間がかかった。
【解説】
『 幼い俺は急にカメラに触らなくなったみたいだ。 』
『ナイフを持った男がアップで笑っている写真だと気づくのに少し時間がかかった。』
この写真は語り手が撮り、
これがきっかけでカメラに触らなくなった?
『銀色の部分には赤い模様が付いていた。』
ことからナイフに血がついている。
『母は事故死だと聞いている。』
ことから、父が母を殺している写真なのかもしれない。
父が母を殺す姿をわざと語り手に撮らせていたのだろうか。